知財高裁(平成3年50日)“チオキサントン誘導体事件共有に係る権利の共有者全員の代理人から審判請求書が提出された場合において、共有者全員が『共同して請求した』といえるかどうかについては、単に審判請求書の請求人欄の記載のみによって判断すべきものではなく、その請求書の全趣旨や当該出願について特許庁が知り得た事情等を勘案して、総合的に判断すべきである。ところで、共有に係る特許を受ける権利についての審判請求のように、共有者全員が共同して請求しなければならないと規定されている場合に、代理人が、共有者全員から拒絶査定不服審判請求について委任を受けているにもかかわらず、共有者の一部の者のみを代理して拒絶査定不服審判を請求することは、あえて不適法な審判請求をすることとなり、そのような行為は、不自然かつ不合理であるといえるから、代理人がそのような共有者全員の利益を害するような行為を行うことは、通常考えられない。そうだとすると、その代理人から審判請求書を受理する特許庁としては、代理人がこのような不合理な行為を行うやむを得ない特段の事情が推認される場合はさておき、そのような事情がない限り、審判請求書の記載上、共有者の一部の者のためにのみする旨の表示となっている場合があったとしても、そのような審判請求書は、誤記に基づくものであると判断するのが合理的である」、上記の観点から、本件について検討する」、@辻永弁理士は、平成8年1月1日、本件出願につき審査請求をしたが、同審査請求書には、請求人として原告ら3名の名称、代理人として辻永弁理士の氏名を記載していること、A特許庁は、本件出願について、平成2年2月2日付けで本件拒絶査定をしたが、本件拒絶査定書では、特許出願人として『サン・ケミカル・コーポレーション(外2名』と記載し、特許出願人が原告ら3名であることを前提として手続を行ったこと、B本件審判請求書には本件出願の出願番号が記載され、本件審判は本件拒絶査定に対する不服手続であることが明白であること、C原告らはいずれも日本国内に営業所又は住所若しくは居所を有しないことから、辻永弁理士は原告らの特許管理人であり、包括的な代理権を有していることを、特許庁が認識していること等の諸経緯に照らすならば、本件審判請求書に、原告A及び原告Bの氏名が表記されなかったのは、過誤に基づくものであって、原告らの共同請求であると認めるのが合理的である」、以上によれば、審判長は、不適法かつ補正し得ない審判請求であるとして、原告らの代理人である辻永弁理士に対して、補正命令をすることなく、審決をもって本件審判請求を却下したものであるから、本件審決は違法であって、取り消されるべきである」と述べている。

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