東京地裁(平成3年0日)“有精卵の検査法事件「行政事件訴訟法3条2項にいう行政庁の処分(同条4項の処分と同じ)とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解するのが相当である(最高裁昭和・・・9年0月9日・・・・判決・・・・参照」、「出願公開(特許法4条1項)は、出願公告制度では実体審査手続の期間中は出願発明の内容が公表されないために、同一技術の開発が重複して行われることがあるという不合理を回避するために導入されたものであり、公開特許公報の発行は、出願公開の方法として特許庁が行うものである(同法4条2項、193条1項。そして、出願公開の効果として、その願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明(拡大先願)と同一の出願(後願)が拒絶され(同法9条の2、出願公開された発明の特許出願人には、特許権の設定登録前に業としてその発明を実施した者に対して補償金請求権が付与される(同法5条1項)ほか、優先審査に関する定め(同法8条の6)がある。そこで検討するに、拡大先願は、先願の明細書や図面に記載されている発明は原則としていずれ公開されるものであり、後願は社会に対して新しいものを提供していないことなどを根拠として、出願公開を条件として公知を擬制し、同一の後願一般を排斥するものであって、特定の個別具体的な後願を排斥するものではないから、出願公開を条件として特許法が特別に定めた一般的な効果というべきである。また、補償金請求権は、出願公開後には出願公開された発明が模倣される危険があるために、特許法が特別に認めた請求権であって、特許出願人の警告等を要件として、特許権の設定の登録があった後に、その登録前に業としてその発明を実施した者に対して行使することができるのであるから、拡大先願と同様に、出願公開を条件として特許法が特別に定めた一般的な効果というべきである。優先審査も、同様に出願公開を条件とする一般的な効果を定めるものにすぎない。そうすると、出願公開(及び出願公開の方法としての公開特許公報の発行)は、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから、行政事件訴訟法3条2項にいう行政庁の処分に当たるとはいえない。したがって、本件公開公報の掲載(発行)は、抗告訴訟の対象である処分には当たらない」と述べている。

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