知財高裁(平成3年7日)“溝穴付き蓋事件請求項1に係る本件補正は『ネジ嵌合する容器の蓋であって、前記する蓋の上面に適度な幅と深さの溝穴を、前記した蓋の一方側端部から中心部を経て対向側端部に至るように溝穴を設けた構成を特徴とする溝穴付き蓋』を『ネジ嵌合する容器の蓋であって、前記する蓋の上面を厚くし、この上面の一方の側端部から中心部を経て対向側端部に至るように直線状に略板状体等が嵌め込める溝穴を設け、この溝穴の底部に更に幅の狭い溝穴を設け、段差状溝穴として設けたことを特徴とする溝穴付き蓋』とするものである。ところで、@別紙実施例図面のとおり、願書に最初に添付した本願明細書の段落0012ないし0015、図1ないし3、図5には、所定の幅と深さの溝穴6を直線状に設ける実施例が記載されるほか、幅が異なる2つの溝穴6、6aを十字状に交差させる実施例が図示されているが、同図面からは、直線状の溝穴の底部に更に幅の狭い溝穴を設け、段差状の溝穴とする技術は、開示又は示唆はされておらず、また、A本願明細書の段落0016における『上面4に設ける溝孔6、6aの幅や深さはもとより、さらに異なる幅のものを2本以上設けても構わない』と記載されているが、同記載からは、上記段差状の溝穴を設ける技術は、開示又は示唆はされていない。したがって、本件補正により付加された事項である『直線状の溝穴の底部に更に幅の狭い溝穴を設け、段差状の溝穴とすること』は、願書に最初に添付した本願明細書に記載されておらず、当業者にとって自明の事項ともいえないというべきである。以上のとおりであり、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法7条の2第3項に規定する要件を満たしていないと判断した審決に誤りはない」と述べている。

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