知財高裁(平成3年95日)“くつ下事件原告は、本件審判手続における平成2年4月2日付け弁駁書・・・・の中で、本件訂正発明に対する予備的な無効理由として、本件訂正明細書・・・・には、優先権当初明細書には記載のない『実質的に同数』との記載があり、優先権当初明細書に記載された発明の範囲を超えているから、出願日遡及の効果は認められず、したがって、本件訂正発明は、甲1発明に基づき、当業者が容易に発明できたものであると主張したものであるが、これに対し、本件審決は、原告の上記主張は、本件訂正に係る申立書の提出前にはなかったものであり、実質的には、審判請求の要旨を変更する補正に当たるので、特許法131条の2第1項の規定に違反し、採用することはできないと判示している。しかしながら、原告は、本件の審判請求書・・・・において、本件出願の当初から、その明細書には優先権当初明細書には記載のない『実質的に同数』との記載があるから、本件発明は優先権当初明細書に記載された発明の範囲を超えており、特許法1条2項の適用を受けることができない旨主張しているのであるから、上記弁駁書・・・・の主張が、審判請求の要旨を変更する補正であるとはいえない。したがって、本件審決には、特許法131条の2第1項の解釈を誤り、その結果、原告の主張内容について審理しないままこれを排斥したという判断の誤りがあったといわなければならない」と述べている。

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