大阪地裁(平成24年10月16日)“血小板保存用バッグ事件”は、「本件では、勤務規則等において、相当の対価につき、特許権の存続期間中、一定の期間ごとに特許発明の実施の実績に応じた額を使用者等から従業者等に支払う旨の定めがされている。このような場合には、相当の対価のうち、各期間における特許発明の実施に対応する分については、それぞれ当該期間の特許発明の実施の実績に応じた額の支払時期が到来するまでその支払を求めることができないのであるから、各期間の特許発明の実施の実績に応じた額の支払時期が、相当の対価の支払を受ける権利のうち、当該期間における特許発明の実施に対応する分の消滅時効の起算点となると解するのが相当である」、「本件において、・・・・原告は、被告に対し、本件発明等に係る特許等を受ける権利を承継させた。被告においては、平成3年4月1日に実施された平成3年規定の第10条では『会社は特許権等が実施されることにより会社の業績に顕著に寄与したものと認められるときは、発明考案者の申請に基づき、・・・・実績補償金を発明考案をした者に支給する。但し実績補償は一の対象物件あるいは対象方法につき、3年間の純利益総額を基準にして3年ごとに評価して支給する』と定めている・・・・。これに基づき、例えば、平成15年度でみると、同年10月1日から同月30日までが実績補償金申請書の提出期間で、承認された場合は、平成16年3月25日が支給日とされている・・・・。なお、平成3年規定に経過規定はないものの、被告においては、平成3年3月31日以前に原告から被告に特許等を受ける権利が承継された発明等(本件発明等1〜3、本件考案6)についても、同年4月1日以降、平成3年規定に基づく取扱いがされていることが認められることから・・・・、かかる発明等についても、実績補償金の支払時期については、上記のとおりと認められる」、「以上を総合すると、原告が、実績補償金について権利行使することができるのは、本件発明等が特許等として登録され、かつその後の被告の3年間の利益が算定可能となった後の年度末(3月31日)と解するのが相当である。そして、その後に生じる被告の利益についても、3年ごとに評価すべき旨定められていることからすると、ある年度の実績に対応する実績補償金の支払時期は、遅くとも当該年度の3年後の年度末(3月31日)には権利行使可能ということができる。また、本件発明等が特許等として登録される以前に実施され、これによって被告が利益を受けた部分についても、権利登録後の実績補償金と併せて行使すべきとされていることから・・・・、特許等の登録前に独立して行使されることは予定されておらず、権利を行使し得る時期は、上記実績補償と同様と認められる」、「本件において、発明の相当の対価として超過売上高が認められるのは、本件発明1−1(ただし、国内販売分に限る。)、2−1、3−1(ただし、平成7年度までの実施分に限る。)に限られるところ、それぞれの権利行使可能時期は以下のとおりである」、「本件発明1−1については、平成8年4月25日に特許登録がされ、平成元年度から平成11年度にかけて本件実施品1の売上げが生じていることから、原告は、平成8年度から平成10年度までの売上げに対する実績補償金につき、平成12年3月31日に権利行使可能であったことになり、特許登録前の平成元年度から平成7年度までの売上げに対応する分についても同様である。また、平成11年度の売上げに対する実績補償金については、平成15年3月31日に権利行使可能であったことになる」、「同様に、平成9年5月2日に特許登録された本件発明2−1については、平成2年度から平成11年度までの売上げに対する実績補償金につき、平成13年3月31日に、その余はその後に権利行使可能となり、平成7年12月20日に特許登録された本件発明3−1については、平成2年度から平成7年度までの売上げに対する実績補償金につき、平成11年3月31日に権利行使可能となる」、「原告は、平成20年11月18日到達の内容証明郵便で被告に催告書兼提訴予告通知書を送付し、その催告書到達日から6か月以内に提訴している・・・・。したがって、時効の中断は平成20年11月18日の催告日に遡る(民法153条)」、「以上によれば、発明の相当の対価として超過売上高が認められるのは、本件発明1−1(ただし、国内販売分に限る。)、2−1、3−1(ただし、平成7年度までの実施分に限る。)に限られるところ、本件発明1−1(平成2年1月5日から平成11年度までの実施分)、2−1(平成2年度から平成22年3月26日までの実施分)及び、3−1(平成2年度から平成7年度までの実施分)についての相当の対価については、いずれも消滅時効完成前に時効の中断がされており、消滅時効は成立していない」と述べている。 |