知財高裁(平成4年1月9日)“レーザーによって材料を加工する装置事件特許請求の範囲には『十分に高』いとされる液体の速度については特段の数値限定等はされておらず、その意義を特許請求の範囲の記載から、一義的に確定することは困難である。そこで、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参照すると、液体の流速については『すなわち加熱時間をそもそもできるだけ短く維持するために、液体が、レーザービームのフォーカス円錐の範囲から、とくにその先端範囲からできるだけ迅速に運び出される。明らかに最善の結果は、わずかな吸収を有するフォーカス円錐における液体の短い滞在時間の際に達成される』、『ノズル入口のほぼ真上にあるこの窓だけによって、フォーカス円錐の先端における液体容量をそもそもできるだけ少なく、かつ流速をそもそもできるだけ高く維持することが可能である』との記載がある。これらの記載からすると『液体の流速が、十分に高く』することは、液体がレーザービームによって加熱される時間を短くすることで熱レンズの発生を防止しようとするものであるから『液体の流速が、十分に高く』とは『フォーカス円錐先端範囲・・・・において、レーザービームの一部がノズル壁を損傷しないところまで、熱レンズの形成が抑圧される』程度に流速が高いことを意味するものと解される」、以上のとおり、・・・・『液体の速度が、十分に高く』のいずれについても、その意義は明確であり、本件特許に係る特許請求の範囲の記載には、法6条5項2号の規定に反する不備はない」と述べている。

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