知財高裁(平成24年11月29日)“電子部材事件”は、「原告は、本件発明5における『強度』及び『延性』について、本件特許出願時において、ハンダ合金の機械的特性の試験方法についてのJIS規格は制定されておらず、・・・・測定方法や測定条件が本件明細書中で明確に定義されていなければ、請求項5の記載は不明確であると主張する。しかし、本件特許出願時において、ハンダ合金の機械的特性の試験方法についてのJIS規格が制定されていなかったとしても、金属材料一般の機械的特性の試験方法についてのJIS規格は存在していたのであるから・・・・、本件発明5の『強度』及び『延性』は、金属材料一般のJIS規格に従って測定したと解するのが自然である。また、原告がその主張の根拠とする甲29においても、『多くのはんだメーカーでは作業者の熟練度依存性の小さい後者の方法(判決注:JISに規定される丸棒などに機械加工する方法)を採用しているものと思われるので、この方法でよいと思われる。』と記載されており、測定方法が一般に複数行われていたとする趣旨ではない。さらに、引張試験の際のひずみ速度の設定については、幅があり得るが・・・・、甲29には、『鉛フリーはんだのほとんどはSn−Pb共晶に比べてクリープしにくい性質をもっているので、室温引張においては通常の引張変形速度であればひずみ速度感受性指数が小さい・・・・』と記載されており、本件発明5を含む鉛フリーはんだでは、引張強さ等の数値は、ひずみ速度による影響(ひずみ速度感受性指数)は小さいので、通常、特別の配慮は不要であることが示唆されており、ひずみ速度が特定されなくては、請求項5の記載が不明確となるものでもない」と述べている。 |