東京地裁(平成24年2月17日)“(3−アミノプロポキシ)ビベンジル類事件”は、「アンプラーグ(サイト注:本件各発明に係る化合物を有効成分とする医薬品の商品名)の被告の自己実施期間(平成5年10月7日〜平成11年9月30日まで)における売上高は、・・・・565億3720万円(年平均約94億2286万円)であり、別件訴訟における同種医薬品であるアルガトロバンの売上高を大きく上回っていること、本件特許権2の存続期間が満了した平成21年5月18日の直後である同年7月に、サルポグレラート塩酸塩(アンプラーグ)について、23の製薬会社から計46品目の薬価追加収載の申請がされ、承認されており・・・・、被告は、本件各特許権の存在により競合他社によるサルポグレラート塩酸塩(アンプラーグ)の製造販売を抑止し、市場を独占することができたと認められることからすると、超過売上高(競業他社に本件発明1及び本件発明2の実施を禁止することによる通常実施権の行使による売上高を上回る売上高)は、上記・・・・の売上高の40%と認めるのが相当である」、「実施料に関する一般的な実例についての報告書である社団法人発明協会発行の『実施料率(第5版)』・・・・によると、医薬品その他の化学薬品の分野における実施料率の平成4年度から平成10年度における平均値は、『イニシャル・ペイメント条件有り』が6.7%、『イニシャル・ペイメント条件無し』が7.1%であること、同期間における実施料率8%以上の契約137件のうち114件が医薬品であり、そのうち8〜10%のものが60件、11〜20%のものが35件、21〜30%のものが9件、31〜50%のものが10件であることが認められるものの、事例によるばらつきが大きく、医薬品に関する実施料率は、一般的な基準が確立されていると認めることはできない。しかしながら、被告がティーティーファーマとの間で締結した実施許諾契約における実施料率は正味販売高の●(省略)●%であるところ、この実施料率が経済的合理性を欠く不相当なものといえない・・・・。また、平成11年10月1日以降、アンプラーグを製造販売している三菱ウェルファーマの平成14年度から平成16年度における売上営業利益率の平均は11.98%であり、製薬企業大手14社の同期間における売上営業利益率の平均は18.24%である・・・・ところ、本件の仮想実施料率を検討する際にはこれらの数値を考慮することが相当といえる。以上の事実に加え、本件各特許発明の内容・意義、本件各特許発明の実施品であるアンプラーグの売上高、・・・・超過売上高の算定において考慮した事情等を総合的に考慮すると、被告の自己実施期間における仮想実施料率は5%と認めるのが相当である」、「アンプラーグは、慢性動脈閉塞症に関し製造承認された世界初の5−HT2受容体に対する選択的拮抗薬であり、血小板及び血管平滑筋細胞の5−HT2受容体を遮断して、血栓形成部位におけるセロトニンの血小板凝集を抑制するとともに血管収縮を抑制するものであって、5−HT2受容体を選択的に遮断するという血小板凝集抑制及び血管収縮抑制の機序は、従来の医薬品とは異なる全く新規なものである。そして、本件発明1は、新規の化合物(ビベンジル類)に関する物質発明であり、当該化合物が血小板凝集阻害作用を有することを見いだしたものであるから・・・・、価値の高い発明であると認められる。また、本件発明2は、特定の化合物(ビベンジル類)がセロトニンの競合的拮抗剤であること、セロトニン拮抗作用に基づく血管収縮抑制剤として有用であることを初めて見いだした発明(用途発明)であるから・・・・、本件発明1と同様に価値の高い発明であると認められる。相当対価の算定に係るアンプラーグの販売期間のうち、本件特許権1と本件特許権2が併存する期間(平成5年10月7日から平成18年4月10日まで)における本件特許権1と本件特許権2の寄与割合については、上記の点に加え、本件発明1は、用途の限定を伴わない物質発明であるから、用途の限定(セロトニン拮抗作用に基づく血管収縮抑制剤)を伴う本件発明2より技術的範囲が広いことも併せ考慮すると、本件特許1が60%、本件特許2が40%であると認めるのが相当である。以上より、相当対価の算定に係るアンプラーグの販売期間における各特許権の寄与割合は、平成5年10月7日から平成18年4月10日までは、本件特許権1:本件特許権2=60:40であり、本件特許権1の存続期間満了後である平成18年4月11日から平成21年5月18日までは、本件特許権2が100%である」と述べている。 |