東京地裁(平成4年39日)“成分の分析方法事件被告は、亜硝酸イオンが共存する検体中の残留塩素、塩素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン又は微量蛋白質を測定するための試薬という物の発明である本件発明3と、その試薬を用いた成分の分析方法という方法の発明である本件発明1・2に係る本件特許権を有している。そして、・・・・被告は、本件発明3を実施した本件各検査薬を販売しており、検査機関等の購入者は、方法の発明である本件発明1・2を実施して蛋白を分析することになる。このため、本件各検査薬の売上高には、本件発明1・2の実施料相当額の利益の要素をも含んでいるというべきである。もっとも、独占の利益は、職務発明について特許がされた場合、特許発明の実施権を専有する効力に対応して生じるものであるところ、本件各検査薬を購入した者による本件発明1・2の実施は、本件発明3の実施に包含される関係にあるから、本件発明1・2による独占の利益も、本件発明3を実施して本件各検査薬の販売をしたことによる独占の利益に包含される関係にあるというべきである。したがって、本件発明3による独占の利益と重複しない本件発明1・2による独占の利益を観念することはできず、・・・・本件発明3による独占の利益について検討すれば足りる」、「本件各発明は、試料に含まれる亜硝酸イオンにより蛋白含量に負誤差が生じるという問題につき、スルファニル酸等、特定のアミノ基を有した有機化合物を添加することによって解決したものである。その適用対象は、尿や髄液中の蛋白の分析だけに限られない。また、蓄尿の方法によっては、亜硝酸イオンにより蛋白含量に負誤差が生じる上、実際、・・・・本件各検査薬が販売される前は、尿中の亜硝酸イオンによるものともうかがわれる原因不明の問合せが続いていたところ、本件各発明に替わる適切な代替手段があったともいえないから、本件各発明の必要性は高かったものといえる。このため、本件各発明と本件特許がなければ、被告の販売していた臨床検査薬『マイクロTP』の施設採用率は約6%まで増加することはなかった可能性が高く、本件各発明と本件特許により、本件各検査薬の施設採用率は約6%にまで至ったものというべきである。以上の事情を総合的に考慮すると、本件各検査薬の売上高に占める本件各発明に係る超過売上高の割合は、0%を下らないというべきである」、「被告が●(省略)●との間で締結した通常実施権の設定に係る契約の実施料率は、販売額の●(省略)●であったことが認められるから、本件発明3に係る超過売上高の想定実施料の率は、これを●(省略)●と認めるのが相当である」と述べている。

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