東京地裁(平成4年39日)“成分の分析方法事件本件各発明は、被告が臨床検査薬の開発・製造業者として研究員の原告に研究施設や研究機材を提供し、尿・髄液中の蛋白含量を測定する臨床検査薬『マイクロTP』を開発して販売する中で、ユーザーの大学病院から原因を含む発明の課題が提供されてなされたものである。しかも、・・・・本件各発明は、ジアゾ反応という有機化学の分野では基本的な化学反応を応用してなされたものであることが認められる上、・・・・本件各発明の作用効果の確認も、スルファニル酸等、検査薬に特定のアミノ基を有した有機化合物を添加して色調が変化しないことを確認するだけで行えたものである。このため、本件各発明は、解決手段さえ着想することができれば、その完成は容易な発明であったものといえる。また、・・・・原告は、本件各発明の完成のために、購入費565万円の分光光度計や購入費約0万円のpHメーター、購入費約0万円の天びんといった研究機器を用いたことが認められる上、・・・・原告は、臨床検査薬『マイクロTP』やスルファニル酸を含めたアミノ基を有する5種類の有機化合物等といった研究材料を用いるとともに、技術サービスセンターに亜硝酸が陽性や陰性の人尿を用いた実験を行ってもらっている。さらに、・・・・本件各発明は、被告に新商品をもたらしたものではなく、既に被告が販売中の比色法を用いた尿・髄液中の蛋白含量を測定する臨床検査薬『マイクロTP』の処方変更をもたらした付加的な発明にすぎない。もっとも、・・・・ジアゾニウム塩を生成するジアゾ反応は、反応性が高いため、定量分析を行う臨床検査薬に用いることは思い付きにくいことが認められる上、本件各発明は、基本的な化学反応を応用した比色法一般に適用し得る広範な発明でありながら、同一の先行発明が存在しなかったのであるから、本件各発明を着想するには発想の転換を要するものであったと推認することができる。また、・・・・原告が用いた研究施設や研究機器、研究材料は、亜硝酸が陽性や陰性の人尿を除けば、本件各発明のために新規に用意されたものではなく、既存のものを用いたにすぎない。さらに、・・・・原告は、本件各発明を通じ、被告が少なくとも6年間にわたり尿中蛋白の定量法において首位の施設採用率を維持することに貢献したものである。加えて、・・・・原告は、本件各発明の明細書案を起案しまた、●(省略)●による本件各発明の無断実施を発見して同社に対する有償の実施許諾につなげるなど、本件各発明の権利化や事業化に相応の寄与をしたものでもある。以上の事情を総合的に考慮すると、本件各発明がされるについて被告が貢献した程度は、0%と認めるのが相当である」と述べている。

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