東京地裁(平成24年4月27日)“スルフアモイル置換フエネチルアミン誘導体事件”は、「本件物質発明に係る特許権の存続期間は昭和63年6月8日から平成17年2月8日までであり、本件製法発明に係る特許権の存続期間は平成2年4月4日から平成17年11月13日までであるから、本来、各特許権ごとに超過利益を算出すべきである。しかし、本件物質発明に係る特許は物質特許であって、その存続期間中は、他社は被告の許諾を受けない限りその物の発明に係る医薬品を製造販売することはできないのであるから、本件物質発明に係る特許権の存続期間である昭和63年6月8日から平成17年2月8日までの間は、被告が得た超過利益は、本件物質発明による特許がもたらした超過利益とみて差し支えないものであり(サイト注:この期間における寄与率は、本件物質発明に係る特許権:本件製法発明に係る特許権=100:0)、本件製法発明に係る特許による超過利益については、本件物質発明に係る特許の存続期間満了後である平成17年2月9日から本件製法発明に係る特許権の存続期間の満了日である平成17年11月13日までの超過利益を算定すれば足りるものというべきである」、「本件医薬品(ハルナール)は、α遮断剤としては尿路に対する選択性が高く、それまでの前立腺肥大症の治療薬の先行医薬であったファイザー株式会社のミニプレス錠(有効成分はプラゾシン塩酸塩)と比較しても、高い尿路選択性を有する発明であり、他の先行医薬品と比較しても医薬品としての技術的優位性を有しており、そのため、その後の市場におけるシェアは高く、前立腺肥大症関連薬のトップブランドとしての地位を確立した。また、その安全性も高いものであった。これらの事情を考慮すると、日本物質特許による独占の利益は売上高の50%とみるのが相当である」、「また、製法発明は物質発明に比較すれば独占力は弱いものの、物質発明の存続期間満了後も、本件医薬品(ハルナール)が相当程度の売上額を維持していること・・・・にかんがみれば、本件製法発明に係る特許による独占の利益は30%とみるのが相当であ・・・・る」、「本件物質発明及び製法発明の価値に照らすと、想定実施料率は、本件物質発明については●(省略)●・・・・、本件製法発明については、物質発明との独占力の相違からみて●(省略)●とみるのが相当である」と述べている。 |