東京地裁(平成24年8月31日)“信号処理装置事件”は、「特許請求の範囲の記載について検討するに、構成要件2Bの文言は、『ディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する』であるから、『ディジタル・データ』と『圧縮処理を施したデータ』との読み出し開始が同時であることが要求されているようにもみえる。しかしながら、構成要件2Bに先立つ構成要件2Aの文言をみると『楽音信号の先頭から、前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに、前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する記憶手段と、』であるから、『ディジタル・データ』の状態で記憶する所定期間は、『圧縮処理を施したデータ』の展開処理に要する時間以上の所定期間であり、『圧縮処理を施したデータ』の状態で記憶する所定期間以降の部分とは、圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間以降の部分である。そうすると、ディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間と同一の期間までの部分をディジタル・データの状態とした場合には両者の読み出しを同時に開始する必要があるが、圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間より長い期間までの部分をディジタル・データの状態とした場合には、その必要は認められないのであって、構成要件2Bの文言のみを根拠として、『ディジタル・データ』と『圧縮処理を施したデータ』との読み出し開始が同時であることが必要であると解することはできない」と述べている。 |