知財高裁(平成5年11日)“光沢黒色系の包装用容器事件本件発明2の特許請求の範囲において、昇温結晶化温度が128度以上、かつ、結晶化熱量がmJ/mg以上という数値範囲は、いずれもシート層、すなわち、容器成形前の状態における物性値を規定したものと認められる。これに対し、本件明細書においては、・・・・昇温結晶化温度及び結晶化熱量の数値は、いずれも容器成形後の容器切り出し片を対象として測定されたものであり、明細書において、特許請求の範囲に記載された容器成形前のシート層に関する記載は認められない」、特許請求の範囲で構成する数値範囲から、容器成形によって、昇温結晶化温度が1度、結晶化熱量が1mJ/m外れただけでも課題が解決できないことになるのであるから、本件発明2が本件明細書に記載されている・・・・というためには、昇温結晶化温度及び結晶化熱量の物性値について、容器成形前のシート層と容器成形後の容器切り出し片との間で、当業者が通常採用する条件であればこれらの物性値が不変であるか、当業者が通常なし得る操作によりこれらの物性値の変化を正確に制御し得るか、あるいは、これらの物性値が変化しないような成形方法や条件が本件明細書に記載される必要があるというべきである」、当業者が通常採用する成形条件の下において、これらの物性値が不変であるとは認められない」、当業者であっても、それらの物性値の変化を正確に予測したり、制御したりすることは容易ではないと認められる。さらに、上記の物性値が変化しないような成形方法や条件について、本件明細書には記載も示唆も認めない」、以上のとおりであるから、本件発明2は、技術常識を参酌しても、発明の詳細な説明によりサポートされているとは認められず、特許法6条6項1号の要件を満たさない」と述べている。

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