東京地裁(平成5年2月3日)“安定材付きベタ基礎工法事件使用者が、自己の経済的な利益を最大化するために、自ら当該特許発明の全体を実施することなく、その一部のみを実施して、これを第三者に販売して利益を得、さらに、その余の部分の実施を第三者に許諾することによって第三者からその対価となる利益を得ることを選択したような場合についても、使用者が自己の実施分の販売により得た利益及び第三者に実施を許諾したことによって第三者から得た利益は、いずれも当該特許発明を排他的かつ独占的に実施し得る地位に基づいて使用者が受けた利益ということができるから、それらは使用者の独占の利益に含まれると解するのが相当である」、「分譲住宅ビルダーが被告から安定材の引渡しを受け、その上にベタ基礎を施工して、本件発明1の構成を有する安定材付きベタ基礎を完成させる行為は、本件発明1の実施行為に当たると認めるのが相当であるから、被告がこれを承知した上で、分譲住宅ビルダーからMS基礎の発注を受け、その代金を受領していたことは、被告が分譲住宅ビルダーに対して、ベタ基礎部分を施工して本件発明1を実施することについての許諾を与えていたものと評価することができる」、「よって、被告が外販において、分譲住宅ビルダーからMS基礎の受注を受け、その安定材部分を施工して分譲住宅ビルダーに販売することによって得た売上げについては、被告の自社実施に係る独占の利益の算定において考慮されるべきであり、また、被告がMS基礎のうちベタ基礎部分を分譲住宅ビルダーに施工させることを許諾したことの対価として受領した額については、第三者に対する実施許諾に係る実施料に相当する収入として被告の独占の利益に算入されるべきである」、「被告が分譲住宅ビルダーから収受していた『MS基礎工法設計料』の中には、実質的に、被告が分譲住宅ビルダーに対して本件特許1を実施許諾したことの対価が含まれていたと解されるが、被告が安定材付きベタ基礎であるMS基礎を設計していたこと自体は事実であるから、上記『MS基礎工法設計料』の中には本来的に設計料に当たる部分が含まれているものと考えられるのであって『MS基礎工法設計料』の全額が実質的に実施料に相当するものであったということはできない」、「平成7年下期から平成3年上期までの間の、被告が安定材及びベタ基礎を施工して販売した場合(内販(サイト注:親会社への販売)の平均販売価格が1棟当たり163万8000円であり、被告が安定材のみを施工してベタ基礎を第三者に施工させた場合(外販)の平均販売価格が1棟当たり0万9000円であったと認められるところ、その差額である102万9000円に・・・・仮想実施料率2%を乗ずると2万0580円となる。そうすると、MS基礎のうちベタ基礎部分を第三者に施工させることで本件発明1を実施許諾した場合に被告が受けるべき実施料相当額は、1棟当たり2万円とするのが相当である」、「被告が本件発明1を実施していた期間は、平成7年0月8日から平成3年6月0日までであると認められるところ、この期間に被告が外販において販売したMS基礎は、・・・7422棟と認められる」、「この棟数に1棟当たりの実施料相当額2万円を乗ずると、被告が得た実施料相当額の収入は、1億4844万円となる」、「被告は、外販において、MS基礎の安定材部分を施工して分譲住宅ビルダーに販売し、同時に、分譲住宅ビルダーが施工するベタ基礎部分について実施料相当の対価を得ていたことから、被告の外販売上げのうち、上記実施料相当額を控除した残額は、被告による自社実施に係る独占の利益の算定において考慮されるべきことになる。本件発明1の実施期間である平成7年0月8日から平成3年6月0日までの間の被告の外販における売上高は、・・・5億3406万2347円と認められる」、「ここから、・・・実施料相当額の収入である1億4844万円を控除すると、3億8562万2347円となるところ、これに、・・・超過売上高の割合0%及び仮想実施料率2%(サイト注:これらは内販において算定したものと同じ)を乗じて被告の独占の利益を計算すると、・・・2631万3734円となる」、「被告の外販における売上げについて、被告が本件発明1に基づいて受けるべき独占の利益の額は、実施料相当額に係る1億4844万円及び自社施工分に係る2631万3734円を合計した1億7475万3734円となる」と述べている。

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