知財高裁(平成25年2月20日)“高強度高延性容器用鋼板事件”は、「本件訂正発明に係る特許請求の範囲に記載された鋼板は、・・・・C:0.005〜0.040%を含有し、容器に用いられるものである限り、各種の成分及び組成範囲を有する鋼板を包含するものである」、「合金は、通常、その構成(成分及び組成範囲等)から、どのような特性を有するか予測することは困難であり、また、ある成分の含有量を増減したり、その他の成分を更に添加したりすると、その特性が大きく変わるものであって、合金の成分及び組成範囲が異なれば、同じ製造方法により製造したとしても、その特性は異なることが通常であると解される。そして、訂正明細書の発明の詳細な説明に開示された鋼の組成についてみると、含有する成分として、C:0.005〜0.040%のほか、Si:0.001〜0.1%、Mn:0.01〜0.5%、P:0.002〜0.04%、S:0.002〜0.04%、Al:0.010〜0.100%、N:0.0005〜0.0060%と特定しているところ、上記以外の成分及び組成範囲を有する鋼を用いる場合においても、上記の所定の製造方法により製造された鋼板が、良好なフランジ成形性を有するものであるとは、当業者が認識することはできないというべきであり、また、そのように認識することができると認めるに足りる証拠もない。そうすると、鋼の組成について、『C:0.005〜0.040%を含有』することを特定するのみで、C以外の成分について何ら特定していない本件訂正発明は、訂正明細書の発明の詳細な説明に開示された技術事項を超える広い特許請求の範囲を記載していることになるから、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない」、「本件訂正発明に係る特許請求の範囲の記載は、鋼板の成分に関し、特許法36条6項1号(サポート要件)に適合しない」と述べている。 |