大阪地裁(平成25年2月28日)“回転歯ブラシの製造方法事件”は、「被告は、本件明細書に記載された実施例では、溶着中に切除を行うことはできず、そのため本件明細書からは、溶着と切除が時間的に一部重なり合う被告方法及び被告装置を実施することはできない旨主張する。しかし、明細書には、当業者が実施可能な程度に明確かつ十分な記載こそ求められるものの、特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態の記載が求められているわけではない。本件明細書には、・・・・本件各特許発明の実施例が記載され、原材料、その処理工程、生産物並びに製造装置の構成及び各工程における動作状況などについて、図面を引用しつつ詳細な説明がされている・・・・。これら記載は、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものといえ、これを否定すべき理由はない。また、・・・・『溶着』の工程と『切除』の工程が一部重なり合う場合でも、切除部位の形状を均一に仕上げるとの目的が達せられることは、本件明細書に接した当業者が十分認識でき、そのような製造方法及び製造装置を実施することは可能であるから、実施可能要件違反とすべき具体的理由があるわけでもない。したがって、実施可能要件違反に係る被告の主張は採用できない」と述べている。 |