東京地裁(平成5年35日)“シリカ質フィラー事件特許請求の範囲及び本件明細書には『該粒径μm以上の粒子の真円度が0.3〜0.(構成要件C)及び『粒径μ未満未満の粒子の真円度が0.3〜0.(構成要件D)にいう各『粒子』の状態及びその真円度の測定に当たっての調整方法を限定する趣旨の記載は存在しないから、真円度の測定がされる上記『粒子』は、本件出願時に通常行われていた試料の調整方法によって調整されたものであれば、その調整方法は特に限定されるものではないと解すべきである」、本件出願時、画像解析法に用いる画像解析用試料の調整方法としては、乾燥した粉体(乾燥粒子)をそのまま試料とする場合(乾式の試料)や、液相中に粒子を分散するなどの前処理をしたものを試料とする場合(湿式処理をした試料)があり、いずれの調整方法も、通常行われていたものと認められる」、したがって、本件発明の真円度を測定するに当たっては、乾式の試料又は湿式処理をした試料のいずれを用いても差し支えないというべきである」、ところで、本件発明の真円度の測定に当たり乾式の試料を測定対象とするか、又は湿式処理をした試料を測定対象とするかによって真円度の数値に有意の差が生じる場合、当業者がいずれか一方の試料を測定対象として測定した結果、構成要件所定の真円度の数値範囲外であったにもかかわらず、他方の試料を測定対象とすれば上記数値範囲内にあるとして構成要件を充足し、特許権侵害を構成するとすれば、当業者に不測の不利益を負担させる事態となるが、このような事態は、特許権者において、特定の測定対象試料を用いるべきことを特許請求の範囲又は明細書において明らかにしなかったことにより招来したものである以上、上記不利益を当業者に負担させることは妥当でないというべきであるから、乾式の試料及び湿式処理をした試料のいずれを用いて測定しても、本件発明の構成要件Dが規定する粒径μ未満の粒子の真円度の数値範囲『0.3〜0.)を充足する場合でない限り、構成要件Dの充足を認めるべきではないと解するのが相当である」と述べている。

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