東京地裁(平成5年68日)“屋根下地材事件特許法102条1項にいう『単位数量当たりの利益の額』とは、仮に特許権者において侵害品の販売数量に対応する数量の権利者製品を追加的に製造販売したとすれば、当該追加的製造販売により得られたであろう利益の単位数量当たりの額、すなわち、追加的製造販売により得られたであろう売上額から、追加的に製造販売するために要したであろう追加的費用(変動製造原価及び変動販売費を含む変動経費等)を控除した額を追加的製造販売数量で除した単位当たりの額をいうものと解するのが相当である」、被告らは、本社経費及び営業費用を製造原価に計上すべきと主張するが、いずれも採用できない。すなわち、被告らが主張する本社経費は、事務職員の給与、役員報酬、交際費、出張費、事務所の電気代といったものを計上したものであり、その費目の性質上、本件原告製品を追加的に製造・販売するに当たって追加的に支出が必要となる費用ということはできないから、変動製造原価に計上することは相当ではない。また、営業費用については、・・・・原告が従前から安定した取引実績のある卸売業者に本件原告製品を販売していたことが認められるから、当該費用も、本件原告製品を追加的に製造・販売するに当たって追加的に支出が必要となる費用というには足りないから、変動製造原価若しくは変動販売費に計上することは相当ではない。この点に関して被告らは、原告の売上高において屋根下葺材製品の売上げが9割強を占め、原告がカタログ作成、新規顧客開拓等の積極的な営業活動を行っていた製品は屋根下葺材製品のみであり、原告による屋根下葺材製品の販売の増加量に応じて本社経費及び営業経費が増加することは明らかであると主張する。しかし、本社経費及び営業経費は、費目の性質上、ゴールドチャンピオンという特定の製品の売上げについては間接的に対応するものであるにすぎない。現に、本件原告製品の製造量全体に占める割合をみても3割程度にとどまっており、本件全証拠を精査しても、原告が平時と異なりもっぱら本件原告製品の売上げにのみ営業費用を費やしたとみるべき特段の事情も認められない。したがって、被告らの上記主張は採用することができない」と述べている。

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