知財高裁(平成5年6月6日)“斑点防止方法事件補正発明と引用発明とは、製紙工程水に、塩素系酸化剤とアンモニウム塩との反応物を添加する点で共通するものである。しかし、引用発明は、パルプスラリーの濃原液における微生物を殺害し、生物汚染を阻害するものであり、炭酸カルシウムが存在する製紙工程において、紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止するものではない」、炭酸カルシウムが存在する製紙工程において、微量スライムが炭酸カルシウムを凝集させることにより、紙に炭酸カルシウムを主体とする斑点が発生することは、いずれの証拠にも記載も示唆もない。補正発明における炭酸カルシウムを主体とする斑点は、そもそも、その存在自体が知られておらず、また、その発生に微量スライムが関与していることも知られていない以上、炭酸カルシウムが存在する製紙工程において、紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を効果的に防止して、高品質の紙を歩留り良く製造することができるという補正発明の効果は、当業者といえども予測できないものであることは明らかである」、そうすると、引用発明に係る方法を、炭酸カルシウムが存在する製紙工程において実施し、紙に発生する炭酸カルシウムを主体とする斑点を防止する方法とすること・・・・は、当業者が容易に想到することとはいえない」と述べている。

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