大阪地裁(平成25年8月27日)“着色漆喰組成物の着色安定化方法事件”は、「原告は、特許法102条2項の適用に当たり、被告が被告製品1の販売によって得た利益を、本件特許権1等の侵害により被告の得た利益(特許法102条2項)として主張している。ところが、本件特許発明1は、・・・・物を生産する方法の発明ではなく、単純方法の発明であるため、被告製品1が当該方法を使用した着色漆喰組成物であっても、その販売は本件特許発明1の実施ではなく、本件特許権1等の侵害を構成するものではない。そのため、被告が被告製品1の販売によって得た利益を、本件特許権1等の侵害により得た利益といえるかが問題となる。しかし、本件特許発明1は、着色漆喰組成物の着色を安定化させるという作用効果を有するものである。すなわち、本件明細書1にも記載されているとおり、従来の着色漆喰組成物には、『着色剤は石灰中に均一に分散しにくく、また混合しても色分かれが生じやすく、それが着色漆喰塗膜の色むらの原因となる・・・・。さらに石灰はアルカリ性の高い物質であるため、その存在下では着色剤の安定性が悪く容易に色褪せや色飛びしてしまうこと、その結果、塗膜の色むらが助長される』・・・・との課題があったが、本件特許発明1を使用することにより、『漆喰組成物を均一に着色することができ、しかも不均一な色飛びを抑制して色むらを生じない着色塗膜が形成できる』・・・・というのであり、その作用効果は実験によっても裏付けられている・・・・。塗壁材としての用途を有する着色漆喰組成物にとって、その着色を均一かつ安定的にし、当該漆喰組成物の使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むらを防止できるということは、塗壁材としての有用性を高めるもので、その商品価値に直結する作用効果といえる。本件特許発明1の有するこのような作用効果を考えれば、被告が本件特許発明1を実施したことによる経済的価値は、これによって均一かつ安定的な着色を実現した被告製品1の販売利益として現れているといえ、そのため、本件においては、被告製品1の販売による利益をもって、本件特許権1等の侵害により被告の得た利益ということができると解される」と述べている。 |