大阪地裁(平成5年87日)“着色漆喰組成物の着色安定化方法事件特許法102条2項により、特許権(あるいは独占的通常実施権)を侵害した者がその侵害行為により利益を受けているときは、その利益の額が損害額と推定されるが、特許発明の実施が当該利益に寄与した度合によっては、上記損害額の推定の一部が覆滅されるものと解される」、「本件特許発明1は、着色漆喰組成物の着色を均一かつ安定的にし、当該漆喰組成物の使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むらを防止するという作用効果を有する。これは、塗壁材としての用途を有する着色漆喰組成物にとって、その有用性を高め、商品価値に直結するものであり、被告製品1の販売による利益に寄与していることは確かである。しかし、本件特許発明1は、物の発明でも、物を生産する発明の方法でもなく、単純方法の発明であるから、物の販売による利益への寄与度については、低く評価せざるを得ない。また、被告製品1を紹介するウェブサイト・・・・及びカタログ・・・・は、本件特許発明1で特定されている含有成分やそれに伴う着色の均一性や安定性、製品使用時に形成される着色漆喰塗膜の色むら防止といった作用効果を、被告製品1の特徴として挙げていなかった。むしろ、それらウェブサイトやカタログは、被告製品1につき、漆喰が有する調湿機能などを基本としつつ、酸化チタンを配合することによる防臭機能や、銀イオンを含有することによる抗菌機能などを特徴として強調しており、この点が現に一定の需要を喚起したこともうかがわれる・・・・。以上の事情に加え、競業他者の存在・・・・も考慮し、0%の範囲で、特許法102条2項の推定が覆滅されると認めるのが相当である」と述べている。

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