知財高裁(平成5年88日)“繰り出し容器事件控訴人らは、被控訴人らが先使用による通常実施権を有したとしても、当該通常実施権は、消滅していると主張する。しかし、控訴人らの主張は、以下のとおり、採用できない。特許法9条は、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、通常実施権を有すると規定する。・・・・被控訴人らは、平成9年3月1日に本件特許が出願された際、本件特許訂正発明1及び同2の技術的範囲に属する本件容器を備えた本件口紅を輸入し、もって『現に日本国内においてその発明の実施である事業』をしていたと認められる。そして、被控訴人らの輸入行為は、販売等に係る事業を目的とするものであること、被控訴人らは、その後本件容器を備えた本件口紅の輸入は行っていないが、控訴人Xが特許権侵害の事実を発見したとする平成3年1月においても、店頭で入手が可能な状態に置かれているとおり、本件容器を備えた本件口紅の販売が継続されていること、被控訴人らは、別のブランドでも突片部を有する容器の使用を行っていること・・・・が認められる。これらの事情を総合すると、当該先使用による通常実施権が消滅したとの控訴人らの主張を採用することはできない」と述べている。

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