大阪地裁(平成26年1月16日)“薬剤分包用ロールペーパ事件”は、「特許製品の属性についてみると、原告製品及び被告製品の分包紙が消耗部材であるのと比較すれば、芯管の耐用期間が相当長いことは明らかである。他方で、分包紙を費消した後は、新たに分包紙を巻き直すことがない限り、製品として使用することができないものであるから、分包紙を費消した時点で製品としての効用をいったんは喪失するものであるといえる。また、・・・・原告製品は、病院や薬局等で医薬品の分包に用いられることから高度の品質が要求されるものであり、厳密に衛生管理された自社工場内で製造されていることが認められる。同様に、・・・・被告製品も、被告が製造委託した工場において高い品質管理の下で製造されていることが認められる。これらのことからすれば、顧客にとって、原告製品(被告製品)は上記製品に占める分包紙の部分の価値が高いものであること、需要者である病院や薬局等が使用済みの芯管に分包紙を自ら巻き直すなどして再利用することはできないため、顧客にとって、分包紙を費消した後の芯管自体には価値がないことも認められる。そうすると、特許製品の属性としては、分包紙の部分の価値が高く、分包紙を費消した後の芯管自体は無価値なものであり、分包紙が費消された時点で製品としての本来の効用を終えるものということができる。芯管の部分が同一であったとしても、分包紙の部分が異なる製品については、社会的、経済的見地からみて、同一性を有する製品であるとはいいがたいものというべきである。被告製品の製造において行われる加工及び部材の交換の態様及び取引の実情の観点からみても、使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為は、製品の主要な部材を交換し、いったん製品としての本来の効用を終えた製品について新たに製品化する行為であって、かつ、顧客(製品の使用者)には実施することのできない行為であるといえる。以上によれば、使用済みの原告製品の芯管に分包紙を巻き直して製品化する行為は、製品としての本来の効用を終えた原告製品について、製品の主要な部材を交換し、新たに製品化する行為であって、そのような行為を顧客(製品の使用者)が実施することもできない上、そのようにして製品化された被告製品は、社会的、経済的見地からみて、原告製品と同一性を有するともいいがたい。これらのことからすると、被告製品は、加工前の原告製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認めるのが相当である。被告製品を製品化する行為が本件特許発明の実施(生産)に当たる旨の原告の主張には理由がある」と述べている。 |