東京地裁(平成6年2月9日)“競争ゲーム装置事件被告の実績補償制度は、知的財産権部が、各事業年度(毎年4月1日から翌年3月1日まで)の実施実績などについて行った調査の結果に基づいて補償金の額を評定し、経営会議が、補償金支給の可否、支給時期及び支給額を決定するというのであるから、相当の対価のうち各事業年度における特許発明の実施等に対応する分については、それぞれ当該期間の特許発明の実施等の実績に応じた額の支払時期が到来するまでその支払を求めることができない。そうであるから、各事業年度の実績補償金の支払時期が特許発明の実施等の実績に応じた相当の対価のうちの当該期間における特許発明の実施に対応する分の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となるのであり、これを本件発明1について特許を受ける権利を被告に譲渡したことによる相当の対価についてみると、そのうちの各事業年度における特許発明の実施に対応する分の支払を受ける権利の消滅時効の起算点は、平成7年度分が平成8年7月4日、平成8年度分が平成9年1月1日、平成9年度分が平成1年1月0日、平成0年度分が平成2年5月1日、平成1年度分が平成3年4月7日、平成2年度分が平成4年5月3日、平成3年度分が平成5年5月0日である」、「原告は、相当の対価の支払を受ける権利は、従業者から使用者等への特許を受ける権利の譲渡時点において一定の金額をもって発生する1個の権利で、使用者等が現に得た利益や実績とは無関係な概念として理解され、期間ごとに区分されるとは観念することができないのであって、実績補償金の最終支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると主張する。しかしながら、勤務規則等に、相当の対価の支払時期が定められているときは、その支払時期が到来するまでの間は支払を求めることができないが、その支払時期が到来すると支払を求めることができるのであるから、それぞれの事業年度の実績補償金の支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となるのであり、実績補償金の最終支払時期がその起算点となるものではない。原告の上記主張は、採用することができない」、「原告は、現実に実績補償金の支払を受けるまでは、相当の対価の支払を受ける権利を行使することができないから、補償金の支払を受けた日までは消滅時効が進行しないと主張する。しかしながら、被告の補償規則及び補償細則は従業者に周知されていたから、原告が現実に実績補償金の支払を受けていないとしても、各事業年度の支払時期に相当の対価の支払を受ける権利を行使することができたものである。原告の上記主張は、採用することができない」、「原告が本件訴訟を提起したのは、平成3年0月3日であるから、原告の相当の対価の支払を受ける権利のうち平成7年度分から平成1年度分までの実績補償金の支払時期を起算点とする消滅時効期間が経過していることになる」と述べている。

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