東京地裁(平成6年2月5日)“移動局として構成された通信網の作動方法事件被告は、@原告方法等の構成が原告(サイト注:被告の原告に対する損害賠償請求権の不存在の確認を求める者)の主張するとおりのものであることは示されていない、A原告の行った・・・・実験・・・・には信用性が認められないなどとして、予備的主張1及び予備的主張2に係る事実を立証するため、特許法105条1項に基づき、原告の所持する(省略●等の提出を求める申立て(以下『本件申立て』という)をする」、「しかしながら、・・・・上記各事実は被告において立証すべき事実であり、また、仮に上記実験に信用性が認められないとしても、それにより直ちに上記各事実が認められることになるものでもないから、上記@及びAの主張はいずれもそれ自体文書提出命令の必要性を基礎付けるものではない。被告は、・・・・原告方法等においてSIBとして(省略●が送信されているかを、原告からの情報開示によることなく、独自に調査・解析することができるのであり、そのための実験は、遅くとも被告による最初の実験(乙4)が行われた平成3年9月以降3年以上の間、日本全国のいずれの地域においても行う機会が存在したものである。しかるに、被告が証拠として提出した実験結果は2通にすぎず・・・・、これ以外に実験が行われたのか否かすら定かではない」、「弁論の全趣旨によれば、被告は、本件提訴に先立つ平成3年1月の原告との面談において、原告に対し、上記実験結果(乙4)を示して原告方法等が本件各発明の技術的範囲に属する旨を主張した事実が認められるところ、仮に上記実験結果のみに基づいて上記主張をしたのであれば、確たる根拠もなく特許権侵害の主張をした結果、原告による本件提訴を招来したと評価されてもやむを得ないところである。しかも、被告は、本件提訴後、予備的主張1及び予備的主張2の立証としては、上記2通の実験結果を提出したにすぎず、また、自ら反訴を提起したり損害額又は不当利得額の主張をしたりしようともしない。このような被告の応訴態度は、自ら行うべき立証の機会を放棄して原告の反証や(省略●を求め続けてきたと評価せざるを得ないものであって、被告は、原告方法等において予備的主張に係る事実が存在しないと推測しながら探索的に本件申立てをしたものと推認されてもやむを得ないところである。したがって、本件申立ては証拠調べの必要性を欠くものであるから、当裁判所は本件申立てを却下する」、「なお、特許法105条1項ただし書の『正当な理由』の有無は、当該書類を開示することによりその所持者が受ける不利益と、これが提出されないことにより申立人が受ける不利益とを比較衡量して判断すべきところ、被告の上記・・・・の応訴態度に加え、本件申立ての対象文書に記載された情報はその性質上いずれも原告の営業秘密に当たると認められることを考慮すれば、本件において原告がその提出を拒むことには正当な理由があると解すべきである。よって、本件申立ては、この点からも理由がない」と述べている。

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