知財高裁(平成6年3日)“商標事件商標法6条1項が準用する特許法167条は、・・・・当事者(参加人を含む)の提出に係る主張及び証拠等に基づいて判断をした審決が確定した場合には、当事者が同一事項に係る主張及び立証をすることにより、確定審決と矛盾する判断を求めることは許されず、また、審判体も確定審決と矛盾する判断をすることはできない旨を規定したものである。同条が設けられた趣旨は、@同一事項に係る主張及び証拠に基づく矛盾する複数の確定審決が発生することを防止すること、A無効審判請求等の濫用を防止すること、B権利者の被る無効審判手続等に対応する煩雑さを回避すること、C紛争の一回的な解決を図ること等にあると解される。そうすると、無効審判請求においては『同一の事実』とは、同一の無効理由に係る主張事実を指し『同一の証拠』とは、当該主張事実を根拠づけるための実質的に同一の証拠を指すものと解するのが相当である。そして、同一の事実(同一の立証命題)を根拠づけるための証拠である以上、証拠方法が相違することは、直ちには、証拠の実質的同一性を否定する理由にはならないと解すべきである。このような理解は、平成3年法律第3号による特許法167条の改正により、確定審決の第三者効を廃止することとし、他方で当事者間(参加人を含む)においては、紛争の一回的解決を実現させた趣旨に、最も良く合致するものというべきである」、「本件審判では、前審判とは異なり『被告の2000年版商品カタログ』・・・『カムイ社の出荷明細』・・・『カムイ社の平成5年度ないし平成8年度の決算報告書』・・・『使用プロ一覧表』・・・・が、証拠として提出されている。そこで、上記各証拠の性質につき、念のため検討する」、「(サイト注『被告の2000年版商品カタログ』について 前審判において、被告は、他のカタログ・・・を提出したが、前審決において、提出に係る当該カタログは作成年月日が確認できないとされたことから・・・・、本件審判において、作成年月日の確認ができるカタログを提出したと解される」、「(サイト注カムイ社の出荷明細及び決算報告書』について 前審判において、被告は、カムイ社が販売した被告ゴルフクラブの本数の表・・・を提出したが、前審決において、販売数の裏付けがないことなどから同表に記載された本数が採用されなかったため、本件審判において、同表の信憑性を裏付けるために提出された証拠と解される」、「(サイト注『使用プロ一覧表』について 前審判において、被告は(サイト注:別の)使用プロ一覧表・・・を提出したが、本件審判において、その形式を変更し、被告ゴルフクラブを使用するプロゴルファーの氏名等を追加記載したものを証拠として提出したと解される」、「上記によれば、本件審判で提出された上記各証拠は、前審決における被告の主張を排斥した判断に対し、同判断を蒸し返す趣旨で提出された証拠の範囲を超えるものではない」、「以上によると、前審判と本件審判とでは、商標法4条1項0号違反の根拠として主張されている事実において同一であり、また、これを立証するために提出された証拠も実質的に同一であると評価できる。したがって、本件審判における本件商標が同項0号に該当することを理由とする無効審判請求は、前審決の確定効に反するものとして許されないというべきである」と述べている。

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