東京地裁(平成6年6日)“電池式警報器事件被告は、第2次無効審判において原告の提出した答弁書・・・・の記載を根拠に、訴訟上の信義則(禁反言)により『表示灯手段(構成要件C)は電圧低下のみを報知するものに限定される旨も主張する。確かに、原告は、第2次無効審判において提出した平成2年0月5日付け審判事件答弁書・・・・において、同事件における甲1号証・・・・と本件発明1との相違点に関し『甲第1号証の故障表示灯は、電池の電圧が所定の電圧以下に低下した場合には点滅点灯し、断線などその他の異常を検出した場合には連続点灯する構成が採用されている。一方、本件特許発明1の表示灯手段では、電池の電圧が所定の電圧以下に低下した場合には点灯または点滅する構成が採用されている。したがって、本件特許発明1の表示灯手段は、点灯または点滅の如何に拘らずに監視領域の利用者に対して視覚を通じて電池の電圧が所定の電圧以下に低下していることを伝える構成が採用されているが、甲1号証の故障表示灯は、点滅させるか点灯させるかによって異なる異常内容を伝える構成が採用されている点で構成が異なっている・・・・と主張していることが認められる。しかし、原告は、特許庁における平成3年2月6日の第1回口頭審理において、上記主張を撤回しており・・・・、第2次審決においても、上記の点は甲1号証・・・・記載の発明と本件発明1との相違点として挙げられていないのであるから・・・・、原告が、上記主張により本件発明につき特許を受け、又はその特許性を維持したものとはいうことができない。また、原告の上記主張は、点灯又は点滅によって異なる異常内容を伝える甲1号証と対比していることによって、被告の主張するように、本件発明1が電池の電圧低下のみを伝える発明であると主張していると解する余地はあるものの、他方、本件発明1が表示灯手段の点灯又は点滅の如何に関わらず電池の電圧の低下を伝える発明であることを主張しているにとどまり、本件発明1が点灯又は点滅の如何に関わらず他の異常内容も併せて伝えることを排斥するものではないと理解する余地もあるものであって、必ずしも、被告の主張するような内容を確定的に主張したものと解することができるものではない。したがって、これにより、原告が構成要件Cの解釈に関しこれと異なる主張をすることが訴訟上の信義則に反するものとは認められず、構成要件Cを限定解釈すべきものとは解されない」と述べている。

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