東京地裁(平成26年4月18日)“建物の断熱・防音工法事件”は、「原告は、平成11年1月9日にG弁理士と会って本件特許出願に関する打合せを行った後の、同月22日頃に、G弁理士に電話をし、本件特許発明の出願に係る特許願に記載する発明者を、被告Bのみとするよう、指示している。この点に関して原告は、同月9日にG弁理士と打合せを行うこととしていたところ、被告Bが一緒に行くと言って同行した上、発明者の記載について、『俺でいいだろ。』と強引に決めつけたと主張して、それに沿う証拠・・・・を提出し、同旨を供述する・・・・。 しかし、・・・・本件特許について発明者を誰とするかについては、同月9日の時点では、被告Bと原告の両名とするか否かについて結論は出ておらず、同月22日の原告からの電話により、被告BとすることがG弁理士に指示されたものと認められる。そして、その当時、原告は営業部長の立場にあり、被告Bからの指示が仮にあったとして、これを拒めない立場にあるものとは認め難いこと、同月9日の時点では、被告Bのみならず、原告も発明者とする考えがあり、これをG弁理士も確認して、同弁理士作成の指示書・・・・に記載を残したもの であり、G弁理士も、同月9日の打合せにおいて被告Bが自らを発明者と決めつけるような発言をした記憶はないと述べていることが認められる。そうすると、一般論として、特許発明を行った者について人格権的権利としての発明者の名誉権を観念し、その発明に係る特許証の発明者欄に氏名の記載がされないことにつき発明者名誉権を侵害する不法行為が成立し得る場合があるとしても、本件の場合、原告は、自ら本件特許の発明者の記載を被告Bとすることに同意していたものと認められるから、その人格的権利の行使を放棄したものと認められるから、発明者名誉権侵害の不法行為は成立しな いというべきである」と述べている。 |