大阪地裁(平成6年2日)“立体像記録再生装置事件被告は、平成9年6月から平成3年7月にかけて、甲1発明及び甲4発明の実施品である試作品を販売し、合計6458万4520円の売上げを得たこと・・・この期間中、被告は甲1発明及び甲4発明の実施を他社に許諾していないことが認められる。このように職務発明を自社のみが実施する場合の独占の利益は、具体的には、現実の売上げのうち独占的実施に基づく超過売上げ(第三者に実施許諾された場合に使用者が得られたであろう仮想の売上高と、現実に使用者が得た売上高との差額に相当する)を求め、これに仮想実施料率を乗じることで算定すべきと解される」、「甲4特許の登録日は平成3年1月8日(補償金請求が可能となる特許出願の出願公開は平成1年0月9日、甲1特許の登録日は平成4年9月4日(特許出願の出願公開は平成3年5月6日)であり、被告による自己実施は、いずれもこれら発明の特許登録前のことであり、出願公開前の実施も含まれている。しかし、いずれの発明も、出願公開前に公知となったり、公然実施されたりしたことを認めるに足りる証拠はない上、同様の作用効果を有する代替技術の存在も証拠上認められないことを考慮すれば、独占的実施に由来する超過売上げは、売上げ全体の0%と認めるのが相当である」、「被告は、LRPの開発費用として合計8148万5519円を負担したため、試作品によって得た利益は一切ない旨主張するが、その費用には、被告代表者の役員報酬や本社賃料など、使用者利益の算定に当たって控除することが明らかに不相当なものが高額に含まれており・・・、その主張を採用することはできない」、「原告は被告の粗利益率を約0%と主張している・・・が、上記売上げ6458万452円から被告の主張立証・・・する材料費等3241万9059円を控除した場合の利益率も約0%であること、甲1発明及び甲4発明と同様の作用効果を有する代替技術の存在が証拠上認められないこと、甲1発明及び甲4発明の内容自体からうかがわれる潜在的な需要も考慮すれば、仮装実施料率は0%と認めるのが相当である」と述べている。

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