大阪地裁(平成6年2日)“立体像記録再生装置事件原告は、被告が本件譲渡契約の対価として受領した5000万円は、甲1発明及び甲4発明に係る特許を受ける権利の譲渡代金であるため、使用者利益に当たる旨主張する。この点、本件譲渡契約では、甲1発明及び甲4発明だけでなく、甲8発明及び甲9発明に係る特許を受ける権利も譲渡対象とされている。甲8発明及び甲9発明に係る特許出願に際しては、被告代表者を発明者とし、被告代表者個人が出願しているが、仮に、両発明の実質的な発明者が原告であったとしても、両発明に係る特許出願は、既に審査請求をされないままみなし取下げとなっていた上、他に本件譲渡契約の対象となる発明の具体的な主張立証はないから、特許を受ける権利に関する限り、実質的に譲渡の対象となっていたのは、甲1発明及び甲4発明に係る権利であったといえる。一方、本件譲渡契約は、これら特許を受ける権利のみを譲渡の対象とするものではなく、被告が有する取引関係、ノウハウ、備品なども含め、LRPの事業全てを譲渡するものであり・・・・、被告はそれらへの対価として5000万円を受領したものである。しかも、本件譲渡契約では、LRP開発の技術面を専ら担い、その技術、ノウハウ等を有する原告が被告からA社へ移籍することが前提とされていた。このような事情に照らせば、本件譲渡契約において、甲1発明及び甲4発明に係る特許を受ける権利が重要な位置付けにあったことを考慮しても、5000万円の全額をこれらの特許を受ける権利の譲渡への対価と見ることはできない。さらに、甲1発明及び甲4発明に係る特許を受ける権利への対価部分に着目しても、そこには独占への対価のみでなく、実施権取得への対価が含まれているため、独占の利益といえる部分はさらに限定される。これらの事情を考慮すれば、本件譲渡契約に基づく対価として被告が受領した5000万円のうち、甲1発明及び甲4発明の相当対価算定の前提となる使用者利益といえるのは、せいぜい2000万円と認めるのが相当である」と述べている。

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