東京地裁(平成6年0日)“選択信号方式の設定方式事件C社ライセンス契約において、C社は被告に対して、・・・・実施料を支払うほか、グラントバック特許***件及びグラントバック権***件を付与しているところ、これらのグラントバックは、同契約において、被告が本件特許をC社に許諾することの対価として、C社が実施料とともに被告に付与したものであるから、上記グラントバックが有する価値は同契約によって被告が受けた利益に当たると認めるのが相当である」、「C社が被告に付与したグラントバック特許***件の内訳は特許***件及び実用新案***件と認められるが、本件において、被告がこれらに係る発明又は考案を実施していることを認めるに足りる的確な証拠はない」、「そうすると、C社ライセンス契約において付与されたグラントバック特許及びグラントバック権に基づいて、被告がC社の特許発明を実施して製品を製造販売しつつ、その実施料の支払を免れたとの事実関係を認めることができないから、被告が上記グラントバックによって現実に具体的な利益を得たものということはできない」、「もっとも、被告が実際にC社の特許発明を実施したか否かにかかわらず、C社ライセンス契約において、被告がグラントバック特許***件を受けたことは事実である。また、グラントバック権***件は、それが***としても、抵触の可能性のある特許が発見されたような場合に侵害となるリスクを回避できるという点で、保険的な価値があることは否定できない。また、弁論の全趣旨によれば、C社ライセンス契約の交渉過程において、グラントバックが実施料額の減額調整のために用いられ、被告及びC社はグラントバックの設定を前提として最終的な実施料額を決定したことが認められる。そうすると、C社ライセンス契約におけるグラントバックが被告にとって無価値であったということはできず、グラントバックはそれが被告に付与された時点で、被告にとって一定の客観的な価値を有していたと認めるのが相当である。そして、上記のとおりこのグラントバックによって被告が得た現実的な利益は認められないが、契約当事者間においてこのグラントバックが実施料の調整として用いられたことに照らせば、C社ライセンス契約により被告に付与されたグラントバックの価値は、同契約においてC社が被告に支払った実施料の額を基準として、その1割に相当する額と認めるのが相当である」、「この点に関し原告は、C社ライセンス契約におけるグラントバックには大きな価値があり、同契約においてはグラントバックこそが『主たる存在』であり、実施料が『調整原理(従たる存在』であると主張する。しかし、同契約におけるグラントバックによって被告が現実的な利益を得たと認めることができないことは前記・・・・のとおりである。また、同契約は、あくまで本件特許を対象とした有償ライセンス契約(サイト注:グラントバック付き有償ライセンス契約)であって、被告の本件特許とC社のグラントバック特許とを互いに相手方に許諾し合うことを目的としたクロスライセンス契約ではないのであるから、同契約においてグラントバックが主たる存在であるとの原告の主張は到底採用できない」と述べている。

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