東京地裁(平成6年0日)“選択信号方式の設定方式事件原告は、被告から特段の指示・命令を受けることなしに、自ら本件発明を着想し、自らこれを具体化し、単独でこれを完成させており、また、その発明・考案説明書において、構成要件Eの基礎となる『最も汎用性が高い(世の中に多い)ppsに設定』することを記載したことによって、後に本件補正による引用例との差異化を可能にしたものと認められる。このほか、原告は、本件特許出願後の本件異議申立ての手続に際して、本件補正を行っても被疑侵害品が本件発明の技術的範囲に入ることを確認したり、本件特許の登録後には、開発部又は知的財産部の従業員として、他社製品の本件発明への抵触性を確認し、これに基づいて権利活用依頼書を作成するなど、本件特許の活用に積極的に貢献したことが認められる。そのような結果、被告は、C社及びD社との間でそれぞれ本件特許に係る有償ライセンス契約を締結し、C社からは実施料として***円(グラントバックの価値を含めた評価は***円、D社からは実施料として***円(グラントバックの価値を含めた評価は***円)を受領し、また、E社ライセンス契約においても、本件特許をカウンター特許として提示することで、***円相当の精算金の減額を得たものと認めることができる」、「他方、本件発明は、当時原告が被告社内で研究開発に従事していたファクシミリ、特にNCUの技術に関連するものであって、原告作成の発明・考案説明書にも本件発明の属する技術分野が『ファクシミリ』であると記載されていた。また、本件特許出願は、被告の知財部門から、ファクシミリに関する特許手続を集中的に委任していたZ特許事務所に依頼して行われた。さらに、本件特許出願当時、電話機から正しい信号方式の選択信号が送出されると交換機のダイアルトーンが停止することを利用して、当該電話回線における正しい信号方式を判定することは公知技術であり、先行技術(乙1発明、乙2発明)に照らして、出願時明細書等に記載された特許請求の範囲の内容には新規性を有する部分がなかったため、本件異議申立てに対しては、被告の知的財産部の従業員がZ弁理士とともに対応に当たり、構成要件Eを付加する本件補正及びこれに基づく反論を行うことによって、本件特許出願が特許登録に至ったことが認められる。そして、被告においては、日頃から従業員に対して積極的に発明を奨励し、会社としても多数の出願活動を行っており、知的財産部及びライセンスグループの知財部門には少なくとも100名程度の従業員を在籍させて、知的財産の形成及び活用に努めている。他社製品に対しては、主に開発部門の社員からの報告に基づいて、知財部門が、社内での検討や外部鑑定を行い、他社との交渉を行って権利活用をしており、本件において原告が行った他社製品の実機試験等は、いずれも原告が被告の開発部門又は知財部門の従業員として行ったものであった。本件各ライセンス契約はいずれもそのような被告の知財部門の業務活動を通じて締結されたものであるが、このうちA社ライセンス契約及びB社ライセンス契約については、・・・・本件特許は、その交渉過程で相手方に提示された特許ではなく、その契約締結当時に相手方が本件特許を実施していた事実も認められないから、その契約締結に直接的に有意な貢献をしたものとはいえず、また、C社ライセンス契約については、・・・・実際にはC社***のうち0機種は本件発明を実施していないと認められ、その余についても本件発明を実施していると認めることができないにもかかわらず,本件特許に係る有償ライセンス契約として締結されたものであることが認められる」、「本件における上記の諸事情に鑑みれば、本件発明によって被告が受けた利益についての被告の貢献度は、5%と認めるのが相当である」と述べている。

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