東京地裁(平成26年7月23日)“洗濯乾燥機事件”は、「平成24年2月3日から平成25年12月末日までの間におけるロ号製品の売上高は、合計48億4774万8306円であることが認められ、これを上回ると認めるに足りる証拠はない」、「ロ号製品は洗濯乾燥機であり、日本標準産業分類においてF302及びF303に分類されるものであるところ、社団法人発明協会発行に係る『実施料率[第5版]』によれば、上記F302及びF303に関連する技術(『18.民生用電気機械・電球・照明器具』)についての平成4年度から平成10年度までの実施料率の平均値は、イニシャルありが2.8%、イニシャルなしが4.6%であり、また、最頻値は、イニシャルありが2%・3%、イニシャルなしが4%であることが認められる」、「本件688発明は、洗濯乾燥機の槽内のカビ、雑菌等の発生を防止し、槽内を清潔に保つ機能を向上させることを目的とした発明であるということができるところ、電機メーカー等のウェブサイトにおける製品情報ページ等において、洗濯機又は洗濯乾燥機に関する『よくある質問』として、洗濯兼脱水槽内のカビの防止に関する質問及び回答が挙げられていること・・・・に照らせば、洗濯乾燥機の槽内を清潔に保つ機能に関する需要者の関心は低いものではないことがうかがわれる。この点に関し、被告は、株式会社東芝CS評価センターによる洗濯乾燥機購入者へのアンケート調査結果・・・・によれば、ドラム式洗濯乾燥機購入者における洗濯槽が清潔に保てる機能に関する重視の度合いは他の項目に比べて低めであると主張する。しかし、そもそも、上記アンケート調査において、購入者が重視することがあり得る項目として挙げられた34項目の1つとして、洗濯槽を清潔に保てる機能が挙げられていること自体、上記項目に関する需要者の関心が低いものではないことを裏付けるものというべきである。また、上記アンケート調査結果を見ても、上記項目に関する購入者の重視の度合いが、他の項目に比べて特段に低いものとはみられない」、「また、ロ号製品において、本件688発明の技術的範囲に属するものと認められる機能は、その宣伝広告上、『カビプロテクト』機能と名付けられているものと認められるところ・・・・、被告は、本件688特許登録前に被告が製造販売した洗濯乾燥機のカタログ等において、『カビプロテクト』機能を大きく取り上げているのであって・・・・、被告が、上記機能を、洗濯乾燥機の宣伝広告における重要な要素として位置付けていたことをうかがうことができ、需要者においても、この点を商品選択の際の考慮要素としていたことをうかがうことができる・・・・。そうすると、ロ号製品について、そのカタログやウェブサイト上の製品説明において、本件688特許登録前の製造販売に係る製品のように、『カビプロテクト』機能につき大きく取り上げる扱いがされていなかったとしても、従前の宣伝広告等により、需要者が当該機能を重視することは十分にあり得るものというべきである。なお、被告は、本件688特許登録前の製造販売に係る製品は、いわゆる縦型洗濯機であり、ドラム式洗濯乾燥機であるロ号製品とは無関係なものである旨主張するが、縦型洗濯機とドラム式洗濯乾燥機の需要者は共通するものと解されるのであって、前者に係る宣伝広告の効果が後者に波及することは十分にあり得るものと解されるところである。加えて、ロ号製品についても、機種名TW−G520L/Rの製品については、そのカタログにおいて、『カビプロテクト』機能により手軽に槽の手入れをすることができる旨が大きく取り上げられていること・・・・、機種名TW−Z370L、TW−G520Lの製品については、株式会社東芝のウェブサイトにおける上記製品の『商品情報』において、カビプロテクト機能を有する旨が記載されていること・・・・に照らせば、ロ号製品においても、『カビプロテクト』機能はその宣伝広告において取り上げられることがあったものということができるのであって、本件688発明に係る機能が需要者の商品選択に寄与する割合が低いものであったとはいい難いものというべきである」、「以上の事情を総合考慮すると、ロ号製品の売上高に1%を乗じた金額が、本件688特許の特許権者が本件688発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する金額(特許法102条3項)として相当であると認められる」、「そこで、以上に従って本件688発明の実施に対し原告らが受けるべき金銭の額を計算すると、次の計算式のとおり、4847万7483円となる。48億4774万8306円×0.01=4847万7483円」、「本件688特許は原告らの共有に係るものであるところ、・・・・原告らの本件688特許の共有割合は1対1であるから、原告ら各自の損害額については、上記・・・・損害額を、原告らの本件688特許の上記共有割合によって按分して算出するのが相当である。そうすると、原告ら各自の損害額は、次の計算式のとおり、2423万8741円となる。4847万7483円×1/2=2423万8741円」と述べている。 |