東京地裁(平成26年9月11日)“傾斜測定装置事件”は、「原告は、本件発明の完成により発明者名誉権を取得したとして、その侵害を理由に不法行為による損害賠償を求めるものである。そこで判断するに、不法行為による損害賠償請求が認められるためには侵害されたとする権利ないし利益が法律上保護されたものであることを要するところ(民法709条参照)、発明をした者がその氏名を特許証(特許法28条1項)等に『発明者』として記載されることは、発明者の名誉といった人格的利益に関するものであって、法的に保護されるとみる余地がある。しかし、このような発明者名誉権は飽くまでも特許制度を前提として認められる人格権であるから、単に発明(特許法2条1項参照)を完成することにより当然に法的に保護されることになるものではなく、発明が新規性、進歩性等の特許要件を充たさず、特許を受けることができないとする旨の拒絶査定が確定した場合には、当該発明の完成により発明者名誉権が発生したとしても、これが法的に保護され、その侵害が不法行為となることはないと解するのが相当である」と述べている。 |