知財高裁(平成26年9月11日)“電話番号情報の自動作成装置事件”は、「特許法102条2項の規定により損害の額を算定するに当たっては、第1審被告が得た利益のうちに当該特許発明の実施以外の要因により生じたものと認められる部分があるときは、同項による推定を一部覆滅する事情があるものとして、その分の額を損害の額から減ずるのが相当である。これを本件についてみると、・・・・第1審被告は本件特許の登録前から同種サービスを提供しており・・・・、第1審被告装置1は本件特許を侵害するものではなかったこと・・・・、第1審被告は保有する3件の特許権に係る特許発明を実施しており、その提供するサービスについて、能率と費用の面でより効果的なものとしていること・・・・、本件発明と同様の調査データを取得し得る方法として、本件特許の侵害とならない方法によることが困難なものとは認められないこと・・・・などからすると、本件発明の技術的意義はさほど高いものではなく、第1審被告事業による利益に対する本件特許の寄与は、相当限定的な範囲にとどまるものと認めるのが相当である。加えて、特許権侵害期間における第1審被告の顧客55社のうち35社(約63%)が本件特許権の特許登録前からの顧客であり、また、固定電話分の売上げの約8割がこれらの顧客によるものであるところ・・・・、第1審被告による本件発明の実施の影響が新規顧客のみに限定されるものではないとしても、本件発明の実施に対応して需要者が何らかの具体的な選択をしたことをうかがわせるような証拠もないことに照らすと、上記の顧客の状況については、第1審被告事業の利益に対する本件発明の寄与を更に限定する要素と認めざるを得ない。第1審原告は、寄与割合を判断するに当たっては、需要者の選択購入の動機が基軸的な要素として重視されるべきであると主張するが、・・・・その主張を認めるに足りる証拠はなく、本件においては、第1審原告の上記主張は採用することができない。また、本件においては、市場に同種のサービスを提供する業者の存在が認められる・・・・。しかし、定期的に行った電話番号の利用状況の調査データと特定の電話番号を照合することにより利用状況を調査するサービスに関しては、第1審原告と第1審被告のほかにサービスを提供する業者は、ほとんど見当たらないこと・・・・からすると、上記の点は、推定を覆滅する要素として重視することはできない。以上の各事情に加え、第1審原告及び第1審被告の主張に照らし、本件の証拠上認められる一切の事情について検討すると、上記第1審被告の利益が特許権侵害による第1審原告の損害額であるとの推定を一部覆滅する事情があると認められ、その割合は65%と認めるのが相当である。そうすると、特許法102条2項の規定に基づいて算定される損害額は、・・・・認定した利益額9994万2225円に35%を乗じた3497万9779円となり、第1審原告がこれを上回る損害を被ったことを認めるに足りる証拠はない」と述べている。 |