知財高裁(平成26年9月24日)“芝草品質の改良方法事件”は、「本件審決は、本願発明も刊1発明は、銅フタロシアニンを含む組成物の有効量を芝生に施用するという手段において区別できず、刊1発明においても芝生の均一性及び密度の改良という作用効果が得られていると解されるから、本願発明と刊1発明は実質的に同一である旨判断した。しかしながら、・・・・本願発明は『芝草の密度、均一性及び緑度を改良するためのフタロシアニンの使用方法』であるから、『芝草の密度、均一性及び緑度を改良するための』は、本願発明の用途を限定するための発明特定事項と解すべきであって、銅フタロシアニンを含む組成物の有効量を芝生に施用するという手段が同一であっても、この用途が、銅フタロシアニンの未知の属性を見出し、新たな用途を提供したといえるものであれば、本願発明が新規性を有するものと解される。そこで、刊1発明における銅フタロシアニンの用途について検討すると、・・・・刊1発明は、銅フタロシアニンを着色剤として用いて芝草を緑色にするという内容にとどまるものであって、刊行物1には、芝草に対して生理的に働きかけて、品質を良くするという意味での成長調整剤(成長調節剤)としての本願発明の用途を示唆する記載は一切ない。加えて、着色剤と成長調整剤とでは、生じる現象及び機序が全く異なるものであって、証拠・・・・によれば、@植物成長調整剤は『農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤』(農薬取締法1条の2第1項)に該当する『農薬』であるのに対して、着色剤はこれに該当しないこと・・・・、A文献上も両者は異なるものとして分類されていること・・・・、B商品としても、両者は区別されて販売されていること・・・・、C成長調整剤は芝草の生育期に使用されるのに対して、着色剤は芝休眠時に使用されるなど使用時期も異なること・・・・などからすると、本願発明における芝草の『密度』、『均一性』及び『緑度』の内容は必ずしも一義的に明らかではないものの、本願発明は、刊1発明と同一であるということはできないものと認められる」と述べている。 |