知財高裁(平成7年月8日)“洗浄剤事件「特許法100条1項は、特許権を侵害する者又は侵害するおそれがある者(以下『特許権を侵害する者等』という)に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる旨を規定しているところ、特許権を侵害する者等とは、自ら特許発明の実施(同法2条3項)若しくは同法101条所定の行為をした者又はそのおそれがある者を意味し、特許権侵害の教唆、幇助をした者は、これに含まれないと解するのが相当である。このように解する理由は、以下のとおりである。すなわち、@民法上、不法行為に基づく差止めは認められておらず、特許法100条1項所定の『侵害の停止又は予防』としての差止めは、特許権の排他的効力に基づき、特許法により特に定められたものである。A他方、教唆又は幇助による不法行為責任は、自ら他人の権利を侵害する者ではないにもかかわらず、被害者保護の観点から特に教唆及び幇助を共同不法行為として損害賠償責任(民法719条2項)を負わせることとしたものであり、上記@の特許権の排他的効力に基づく特許法100条1項所定の差止請求権とは、制度の目的、趣旨において異なる。B教唆又は幇助については、その行為態様として様々なものがあり、特許権侵害の教唆行為又は幇助行為に対して無制限に差止めを認めると、差止請求の相手方が無制限に広がり、差止めの範囲が広範にすぎるなどの弊害が生じるおそれがあるところ、特許法101条所定の間接侵害の規定は、上記弊害の点に鑑み、特許権侵害の幇助行為の一部の類型に限り侵害とみなして差止めの対象としたものと解されるから、それを超えて幇助行為一般及び教唆行為について差止めを認めることは、同条の趣旨に反するものということができる」と述べている。

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