知財高裁(平成7年2日)“回転角検出装置事件本件発明(サイト注:請求項1に係る発明)の『前記信号入力用及び前記接地用の端子は各磁気検出素子の同一位置に配置された端子毎に同じ方向へ引き出されて』には、@各磁気検出素子の信号入力用の端子の引き出し方向と、接地用の端子の引き出し方向とが同じであるために、各磁気検出素子の信号入力用の端子と接地用の端子がいずれも同じ方向へ引き出される態様(以下、この引き出し態様を『同方向引き出し態様』という)と、A各磁気検出素子の信号入力用の端子の引き出し方向と、接地用の端子の引き出し方向とが異なるために、各磁気検出素子の信号入力用の端子と接地用の端子が別々の方向へ引き出される態様(以下、この引き出し態様を『別方向引き出し態様』という)とが含まれることになる」、「同方向引き出し態様が、第1実施例として本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていることについては、当事者間に争いがないから、別方向引き出し態様が発明の詳細な説明に記載され又は記載されているに等しいか否かについて検討する」、「本件明細書の第1実施例に関する記載中には、別方向引き出し態様についての記載はない」、「第2実施例には、各磁気検出素子の信号入力用の端子と接地用の端子が別々の方向へ引き出される別方向引き出し態様が記載されていることが認められる。確かに、第2実施例は、請求項1が『複数の磁気検出素子は、並列に180度逆方向で配置され』と記載されているのに対して『複数の磁気検出素子は、直列に同方向で配置され』と記載されていること以外は、発明特定事項を共通にする請求項2の実施例として記載されたものであり、請求項2は、・・・・平成8年6月1日付け手続補正書による補正によって削除されたものの、第2実施例の記載は本件明細書にそのまま残されたものであって・・・・、第2実施例自体は、本件発明に係る請求項1の実施例ではない。しかし、第2実施例は、ホール1、2の配置態様が請求項1とは異なるものの、組付けが簡単になる効果を奏する構成を提示するものであり・・・・、第2実施例においても第1実施例のように同方向引き出し態様を採用することに何らの技術的困難性がないにもかかわらず、あえて別方向引き出し態様を記載していることからすれば、当業者であれば、第2実施例の別方向引き出し態様は、第1実施例の同方向引き出し態様の別例として示され、同様に組付けが簡単になる効果を奏するものと理解するというべきである。このように、本件明細書において、別方向引き出し態様は、第2実施例のホール1、2の配置態様(第1実施例のように並列に180度逆方向で配置するのではなく、直列に同方向で配置すること)とは区別して理解し得る技術的事項であるから、当業者であれば、第2実施例の別方向引き出し態様を、第1実施例のホール1、2の配置態様に適用することは、容易に理解し得る技術的事項であるということができる。したがって、本件明細書の全体をみれば、本件発明に関しても、別方向引き出し態様が記載されているに等しいと認められる」、「そうすると、本件発明は、・・・・同方向引き出し態様及び別方向引き出し態様のいずれをも含むものであるところ、本件明細書の発明の詳細な説明には、同方向引き出し態様が記載されているのみならず、別方向引き出し態様も記載されているに等しいということができ、かつ、これらの引き出し態様によって、組付けが簡単になるという本件発明の課題を解決できることが認識できるから、本件発明は、サポート要件を充足するというべきである」と述べている。

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