知財高裁(平成27年11月19日)“オフセット輪転機版胴事件”は、「被告製品2(2)及び(3)に係る被控訴人の行為は、・・・・顧客先の輪転機に既存の版胴に対するヘアライン加工を受注し、同工事を施工したというものであるところ、控訴人は、被告製品2(2)及び(3)が既存版胴に対する加工というより安価な侵害態様であっても、特許権者の製品の販売機会が喪失する以上、特許法102条1項が適用されるとして、被告製品2(2)及び(3)を譲渡数量に含めた損害額の算定を主張するのに対し、被控訴人は、被告製品被告製品2(2)及び(3)については、『譲渡』ではなく、『生産』の実施行為があっただけであるから、これらについて同項の適用はない旨主張する」、「被控訴人が、被告製品2(2)及び(3)に対して施工した版胴表面のヘアライン加工は、金属(版胴)の表面を一定方向に研磨することで連続的な髪の毛のように細かい線の傷をつける加工であり・・・・、表面粗さRmaxが加工前は6.0μmよりも小さい値であったのを、加工後は約10μmに調整するものであるから、上記加工は、版胴の表面粗さを6.0μm≦Rmax≦1000μmに調整した本件訂正発明2に係る版胴を新たに作り出す行為であると認められる(弁論の全趣旨)。したがって、被控訴人の被告製品2(2)及び(3)に係る行為は、特許法2条3項1号の『生産』に当たるというべきである」、「また、被控訴人は、顧客から被告製品2(2)及び(3)に対するヘアライン加工を有償で受注し、上記のとおり、ヘアライン加工の施工により本件訂正発明2の版胴を新たに作り出し、これを顧客に納入していること・・・・により、控訴人の販売機会を喪失させたことになるから、被告製品2(2)及び(3)についても、特許法102条1項を適用することができるというべきである」、「被控訴人は、版胴に追加工する場合の顧客の負担と版胴を控訴人製品に交換する場合の顧客の負担に鑑みれば、被控訴人製の輪転機の顧客が、本件訂正発明2を実施した版胴を得たいがためだけに、既存の版胴を廃棄し、控訴人製品をあえて購入した現実的可能性はない旨主張する」、「被控訴人主張の上記事情については、特許法102条1項ただし書において考慮すべきものである」と述べている。 |