知財高裁(平成27年11月26日)“青果物用包装袋事件”は、「本件発明1と引用発明1とが、・・・・相違点1ないし3において相違することは、当事者間に争いがない。原告は、相違点1ないし3は、いずれも実質的な相違点ではない旨主張するので、まず、相違点3(本件発明1においては、構成要件E『青果物100gあたりの切れ込みの長さの合計が0.08mm以上17mm以下である』との特定がされているのに対し、引用発明1においては、そのような特定はされていない点)が実質的な相違点であるか否かについて判断する」、「引用発明1は、包装袋に設けるスリットの形状を、スリット1つ当たりの長さ、フィルムの総面積に対するスリットの合計全長により特定しているものの、『青果物100gあたりの切れ込みの長さの合計長』により特定するものではなく、引用発明1において特定された事項から、引用発明1における青果物100g当たりのスリットの合計長を特定することはできない。したがって、相違点3は、実質的な相違点であるというべきである」、「原告は、本件発明1の『100gあたりの切れ込みの長さの合計』との発明特定事項は、包装袋の形状、大きさ、材質等に関わりなく、『青果物の重量』と『切れ込みの長さの合計』との2つの要素のみによって特定されるパラメータであるから、引用発明1において、どのような形状、大きさの包装袋を想定して『100gあたりの切れ込みの長さの合計』を計算したとしても、その包装袋において『青果物100g』当たりの『切れ込みの長さの合計』が『0.08mm以上17mm以下』の数値範囲と重複することが明確であれば、引用例1には、本件発明1における『青果物100gあたりの切れ込みの長さの合計が0.08mm以上17mm以下である』との構成が開示されていると考えるのが合理的である旨主張する。しかし、引用例1には、・・・・引用発明1が、青果物の根や株等を切り取らずに包装する際に、余剰な水分による悪影響を抑え、かつ水分蒸散によるしおれが起こらないように内部水蒸気圧を制御する青果物用鮮度維持包装袋を提供することを目的とするものであり、所定の長さのスリットを設けることにより、包装袋の内部水蒸気圧の変化に伴って、スリットの開孔面積が変化し、包装袋の内部水蒸気圧の制御を極めて良好に行うことができ、1つのスリットの長さを0.5〜1.5mmと設定しているので、包装袋の強度を損なうことなく、効率的に包装袋の内部水蒸気圧の制御を行うことができ、従来の補助穴の代わりにスリットを形成しているので、包装袋の製造が容易になるとともに安価で提供することができるという効果を奏するものであることが記載されているにすぎず、設けるスリットの合計長を包装する青果物量に応じて好適化するという技術的思想については、記載も示唆もない。したがって、相違点3に係る本件発明1の構成が、青果物の種類や包装袋の形状や材質等にかかわりなく『100gあたりの切れ込みの長さの合計が0.08mm以上17mm以下である』ことを規定するものであるからといって、引用発明1において、かかる構成が実質的には開示されているということはできない」、「以上によれば、本件発明1と引用発明1とは、少なくとも相違点3において相違するから、本件発明1が引用発明1と同一であるとは認められない。したがって、本件審決における本件発明1に係る引用例1に基づく新規性判断に誤りはない」と述べている。 |