知財高裁(平成27年11月5日)“4H型単結晶炭化珪素の製造方法事件”は、「特許法29条1項3号に該当するというためには、刊行物が不特定又は多数の者において閲覧可能な状態になることを要すると解される。しかし、・・・・DTIC(サイト注:米国国防技術情報センター)が引用例2を受領し、その電子文書管理システムに格納し、DTIC目録に載せて索引を付した段階では、引用例2にアクセスをすることができた者は、『DTICの登録ユーザである国防省及び連邦職員、並びにその契約者(一般市民は含まれない)』に限られていたというのであるから、引用例2が、上記当時、不特定又は多数の者において閲覧可能な状態であったとの事実を認めるに足りない。かえって、・・・・DTICは公衆に対して文献を頒布しておらず、公衆への文献の頒布はNTIS(サイト注:米国商務省科学技術情報サービス)が行っており、引用例2については、NTISを通じて公衆への頒布が可能となったのは、本件特許の出願日の後である平成8年3月15日であることが認められる。このように、引用例2が不特定又は多数の者において閲覧可能な状態となったのは、平成8年3月15日以降のことであると認められるから、引用例2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物であるということはできない」と述べている。 |