知財高裁(平成27年12月17日)“光伝送システム向けレート適応型前方誤り訂正事件”は、「原告は、審決は、本願の請求項10に係る本願発明について、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断した上で、請求項1ないし9については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものであるとするが、本願では、本願発明は方法の発明であり、請求項1ないし9に係る発明は物の発明であるところ、方法の発明と物の発明では、それぞれ実施行為(特許法2条3項)、特許権の効力範囲(特許法68条)が異なるのであるから、請求項に係る発明ごとに個別に特許要件を検討する必要性が高く、審決が、請求項1ないし9に係る発明の特許要件について判断をしなかったことには、審理不尽の違法がある旨主張する。しかし、特許法は、1つの特許出願に対し、1つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ、これに基づいて1つの特許が付与され、1つの特許権が発生するという基本構造を前提としており、請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。このような構造に基づき、複数の請求項に係る特許出願であっても、当該特許出願の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかなく、一部の請求項に係る特許出願について特許査定をし、他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは、特許法上予定されていない。したがって、・・・・請求項10に係る本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1ないし9に係る発明について判断することなく、拒絶査定に対しなされた本件不服審判請求は成り立たない、とした審決の判断に誤りはなく、手続上の瑕疵があるともいえない。よって、原告の上記主張には、理由がない」と述べている。 |