知財高裁(平成27年12月24日)“ビタミンDおよびステロイト誘導体の合成用中間体の製造方法事件”は、「本件明細書の記載及び本件出願日当時の当業者の技術的知見を考慮すると、『Z』が『ビタミンD構造』である出発化合物を用いた場合にも、当業者であれば、『ステロイド環構造』である実施例の条件を参考にしつつ、本件明細書に記載された範囲内で反応条件を適宜設定することにより、過度な試行錯誤を要することなく、エポキシド化合物(中間体)及び目的化合物を製造することができる。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明に係る化合物の製造方法について、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載したものと認められる」、「原告は、反応条件を実施例3、5、6のようにすれば高い収率で反応することについて、本件明細書に記載はなく、本件発明1及び13を実施するに当たり、『塩基の存在下で』や『還元剤で処理して』としかされていない本件明細書の記載からは、当業者は、高い収率で目的化合物を得ようとすると、過度の試行錯誤や複雑な実験を強いられる旨主張する。しかし、・・・・本件発明に係る化合物の製造方法の発明を実施することができるというためには、収率が高いことが要求されるものではなく、反応が進行し所望の化合物を製造できればよいのであるから、ステロイド環に関する実施例の反応条件を参考にしつつ、本件明細書に記載された範囲内の反応条件を選択し、ビタミンD構造を有する出発化合物を用いて中間体や目的化合物を製造することは、当業者が過度な試行錯誤を強いられることなく行うことができるといえる。したがって、原告の上記主張は採用できない」と述べている。 |