知財高裁(平成7年28日)“入金端末事件請求項1の補正は、補正前の請求項1に記載された『前記実店舗に設置された決済端末に入力可能な形式』における『形式』について『且つ当該決済端末が前記割引内容を特定可能な形式』とする補正である」、補正前の請求項1に記載された『前記実店舗に設置された決済端末に入力可能な形式』における『形式』とは、例えば『数字』や『バーコード』、『電子マネーカード』に記憶されるデータのような、会計担当者が決済端末に入力したり、決済端末が特定することを可能とする、割引内容識別情報の表示(クーポン券への印字・印刷)形式ないし記録形式をいうものと認められる。言い換えれば、補正前の請求項1においては『決裁端末』に入力可能な割引内容識別情報の表示形式ないし記録形式が、会計担当者が入力可能な形式であるか、あるいは、決裁端末が特定可能な形式であるかについては、そのいずれとも限定されていなかった。これに対し、補正後の請求項1においては『形式』について、補正前の『前記実店舗に設置された決済端末に入力可能な形式』に付加して『且つ当該決済端末が前記割引内容を特定可能な形式』とする補正により、・・・・『決裁端末』に入力可能な割引内容識別情報の表示形式ないし記録形式は、決裁端末が特定可能な形式に限定された。これを、請求項1に記載された『決裁端末』についてみると、補正前の請求項1においては『決裁端末』は、それが『実店舗に設置された』ものであることと『割引内容の適否を判断する』ものであることのみによって特定されているにすぎなかった。補正後の請求項1においては、上記特定事項に加えて『割引内容を特定可能』という構成によっても特定されることになったものである。そうすると、請求項1の補正は、補正前の請求項には存在しなかった構成を付加するものというべきである。したがって、請求項1の補正は、特許法7条の2第5項2号かっこ書に規定する『補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの』という要件・・・・を充足しない」と述べている。

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