東京地裁(平成27年3月18日)“生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置事件”は、「被告は、乙5装置(サイト注:先使用に係る装置)の実施形式には『生海苔の異物分離除去装置において、生海苔と海水との混合液である生海苔混合液をして狭い隙間を通過させることにより前記生海苔混合液に含まれている異物であって当該隙間を通過できない大きさの異物を分離除去する際に、前記隙間に異物などが詰まることを防止する手段を設ける』との被告技術的思想Aが具現されており、被告装置も、これと同じ技術的思想を具現したものであるから、被告装置に先使用権が及ぶと主張する。しかし、・・・・『発明』というためには、その技術内容が抽象的な思想にとどまるものでなく、一定の技術的課題を解決するための技術的手段がその効果を挙げることができる程度に具体的かつ客観的なものとして構成されていなければならないと解されるところ、被告が被告技術的思想Aとして主張する上記内容は、単に隙間に異物などが詰まることを防止する手段を設けるというものにすぎず、そこには、隙間に異物などが詰まることを防止する必要があるという課題は見受けられるものの、その技術的課題を解決するために採用される技術的手段、すなわち、詰まりを防止する手段についての基本的な構造や態様については、何ら具体的かつ客観的なものとして構成されていない。したがって、被告が被告技術的思想Aとして主張する内容は、乙5装置に具現された技術的思想の創作としての『発明』であるということはできない。そうすると、被告装置が、乙5装置と同様に、『隙間に異物などが詰まることを防止する手段を設ける』ものであるとしても、それをもって、被告装置が、乙5装置の実施形式に具現された発明と同一性を失わない範囲内のものであるということはできない」、「乙5装置の実施形式に具現された発明は、・・・・被告装置に係る発明と・・・・全く異なるものであるというべきであるから、仮に原告による本件特許出願の際に被告が乙5装置に係る事業を実施していたとしても、そのことに基づいて、被告装置に関して本件特許権についての先使用権を有するものとは認められない」と述べている。 |