東京地裁(平成7年38日)“生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置事件特許製品について加工や部材の交換をする行為であっても、当該特許製品の属性、特許発明の内容、加工及び部材の交換の態様のほか、取引の実情等も考慮して、その行為によって当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは、特許製品の『生産(特許法2条3項1号)として、侵害行為に当たると解するのが相当である。ここで、当該特許製品の属性としては、製品の機能、構造及び材質、用途、耐用期間、使用態様が、加工及び部材の交換の態様としては、加工等がされた際の当該特許製品の状態、加工の内容及び程度、交換された部材の耐用期間、当該部材の特許製品中における技術的機能及び経済的価値が考慮の対象となるというべきである」、本件板状部材の取付けについては、・・・・生海苔異物分離除去装置である被告装置において『共回りを防止する防止手段(構成要件A3)である本件板状部材が、厚さ数mm、長方形状の『板状』であって、本件固定リングの表面及び内周側部分よりも僅かに突出して、本件固定リングと回転円板との間に形成された環状隙間に突出部を形成することによって、環状隙間の目詰まりを防止する構成となっており、このような構成が本件各発明の『共回り防止装置(構成要件C)に該当すると認められるところ、本件板状部材は、被告装置の使用(回転円板の回転)に伴って摩耗するから、このような摩耗によって上記突出部を失い、目詰まり防止の効果を喪失した本件板状部材は、もはや本件各発明の『共回りを防止する防止手段』に当たらないというべきであり、また、そのようにして『共回りを防止する防止手段』を失った被告装置は『共回り防止装置』に当たる構成を有しないものというべきである。そうすると、そのように『共回りを防止する防止手段』及びそれを含む『共回り防止装置』の構成を有しない被告装置について、新しい本件板状部材を取り付けて、新たに突出部を設ける行為は、それにより本件各発明の『共回りを防止する防止手段』を備えた『共回り防止装置』を新たに製造するものであるということができるから、その行為は、特許法2条3項1号の『生産』に当たるというのが相当である。よって、原告は、被告に対し、同法100条1項に基づき、被告装置に対して本件板状部材を取り付ける行為の差止めを求めることができる」、一方、本件固定リングも、被告装置の使用(回転円板の回転)に伴って摩耗するものであるが、本件固定リングが摩耗したとしても、本件固定リング自体は『共回りを防止する防止手段』ではなく、また、本件固定リングの摩耗によって、例えば環状隙間の間隔が広がり、生海苔異物分離除去装置である被告装置の異物分離除去の機能に支障が出るとしても(この場合は、クリアランスの目詰まりが起こりにくくなり、目詰まり防止の必要性は低くなると考えられる。)、そのことは、クリアランスの目詰まりをなくして共回りの発生を防ぐという、本件各発明の『共回り防止装置』が果たす機能とは無関係であるというべきである。そうすると、本件固定リングが摩耗したにすぎない被告装置について、その固定リングを交換し、新たな固定リングを取り付けたとしても、それによって、被告装置が既に備えている『共回り防止装置』と同一性を欠く、新たな『共回り防止装置』が製造されたということはできないから、かかる行為が本件各発明の『共回り防止装置』を新たに製造する行為であると評価することはできない。よって、被告装置に対して本件固定リングを取り付ける行為の差止めを求める原告の請求は理由がない」と述べている。

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