知財高裁(平成7年35日)“ローソク事件被告は、訂正事項5、6は、実質的に明細書の記載を、本件補正1(サイト注:新規事項の追加となる補正であって補正後の記載内容自体に誤りはないもの)前の記載に戻すことを目的とするものであり、かつ、当該訂正は特許請求の範囲の記載の解釈に影響を及ぼすものではないから、誤記の訂正として認めても第三者の不測の不利益は生じず、他方、審決も述べるとおり、このような訂正を認めることは、権利内容の一部に瑕疵があったことにより、特許全体が無効にされることを回避するという訂正制度の趣旨に合致するものであるから、誤記の訂正と解されるべきである旨主張する。また、審決も、訂正の請求に関する規定は、特許明細書等の内容は登録後みだりに変更されるべきものではないが、特許権の登録後にその権利内容の一部に瑕疵があるため、有効な部分までもが併せて無効になってしまうことは権利者にとって酷であることから、その瑕疵を是正して無効理由や取消事由を除去することができる途を開く必要があるという、相反する要請を調和させるものとして設けられた規定であることに鑑みても、訂正事項5及び6の訂正は、誤記の訂正に該当するものとするのが至当である旨述べる。しかし、訂正制度の趣旨が、被告や審決の述べるような趣旨のものであることはそのとおりであるものの、特許法は、そのような相反する要請の調和を図る具体的な範囲として、同法134条の2第1項ただし書の各号に掲げる事項を目的とするものに限って訂正を認めているのであり、同項二号の『誤記又は誤訳の訂正』とは、その文言上、記載内容自体が誤っているときに、その記載を正しい記載内容に訂正することを意味することが明らかであるから、記載内容自体が誤っていない記載の訂正を、同号に含めることはできない。したがって、被告の主張を採用することはできない」と述べている。

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