知財高裁(平成27年4月28日)“蓋体事件”は、「クレハ容器は、食材を収容するとともに、フタをつけたまま電子レンジ等で食材を加熱するための容器であって、穴部は、加熱の際に容器内で食材から発生する蒸気を放出するための穴であり、穴部を閉塞する突起部及び突起部を備える開閉部材は、容器内の食材を保存するときには、穴部を閉塞し、容器内部環境の衛生状態を維持するとともに、食材を加熱するときには、穴部を開けて容器内の水蒸気や膨張した空気を容器外へ排出するためのものであることが認められる」、「これに対して、甲6発明は、・・・・食材を容器内で真空に保つようにすることを目的とした容器であり、当然のことながら、容器内を真空にすることを前提としており、穴部も真空に係る構成部材(真空感知開口部5、通気孔4)としての穴であり、シール片3(カバー7)も通気孔4をふさぐための開閉部材であり、真空を維持又は解除するためのものであることが認められる」、「甲7に係る容器は、・・・・粉末のコーヒーや砂糖、顆粒状の各種調味料や食品又は粉末状の薬剤や錠剤等の粉粒体用の粉体容器であり、クレハ容器のように、電子レンジ等による加熱可能な容器ではない。また、密閉容器から内容物を取り出すに際して、大量に使用する場合には蓋体を外してスプーン等の道具を用いて取り出し、少量を使用する場合には蓋体に設けられた開口部から注ぎ出すようにして、使用する量に応じて取り出し口を選択できるようにした蓋体を有するものであって、注出口4aは内容物である粉粒体を容器外へ振り出すための穴であり、嵌合筒壁3a及びヒンジ蓋3は、注出口4aを開閉するためのものであることが認められる」、「甲8に係る容器は、・・・・粉体材料(・・・・細かく分割された固形物)を収容する容器であり、クレハ容器のように、電子レンジ等による加熱可能な容器ではない。また、分配用孔aは内容物である粉体材料を容器外へ振り出すための穴であり、突出部35及び蓋フラップ27は、分配用孔aを開閉するためのものであることが認められる」、「以上のとおり、クレハ容器と甲6〜8に係る容器は、異なる技術分野に属し、クレハ容器の穴部、突起部及び開閉部材と、これに対応する甲6〜8に係る容器の各部材とは、その用途及び機能が相違するものである。このように、技術分野、用途及び機能の異なるクレハ容器に対して、あえて甲6〜8記載の発明を適用する動機付けを見出すことはできない」、「クレハ容器に甲6〜8記載の発明を適用する動機付けはなく、クレハ容器に甲6〜8記載の発明を適用することにより、相違点3に係る発明特定事項のように構成することが容易に想到し得たということはできない」と述べている。 |