知財高裁(平成27年4月28日)“パイプ材把持装置事件”は、「使用者等が、第三者に当該発明を実施許諾することなく、自ら実施(自己実施)している場合には、特許権が存在することにより、第三者に当該発明の実施を禁止したことに基づいて使用者が得ることができた利益、すなわち、特許権に基づく第三者に対する禁止権の効果として、使用者等の自己実施による売上高のうち、当該特許権を使用者等に承継させずに、自ら特許を受けた従業者等が第三者に当該発明を実施許諾していたと想定した場合に予想される使用者等の売上高を超える分(『超過売上高』)について得ることができたものと見込まれる利益(『超過利益』)が『独占の利益』に該当するものというべきである。この『超過利益』の額は、従業者等が第三者に当該発明の実施許諾をしていたと想定した場合に得られる実施料相当額を下回るものではないと考えられるので、超過利益を超過売上高に当該実施料率(仮想実施料率)を乗じて算定する方法にも合理性があるものと解される」、「被控訴人が丸一鋼管から第1号機の製造を受注した平成16年2月25日の時点では、原告方式の自動チャック装置の発明について、特許権の設定登録がされていなかったのみならず、・・・・出願公開すらされていなかったのであるから、第1号機の売上高について、本件特許権が存在することにより、第三者に発明の実施を禁止したことに基づいて被控訴人において得ることができた利益があったものと想定することは困難である。一方で、・・・・第2号機は、本件特許権が平成19年4月27日に設定登録された後に、被控訴人が丸一鋼管からその製造を受注したものであるから、本件特許権が存在することにより、第三者に発明の実施を禁止したことに基づいて被控訴人において得ることができた利益があったものと観念し得るものといえる」、「被控訴人が第1号機の受注に引き続き、第2号機の受注に至った経緯等諸般の事情を総合考慮すると、第2号機に本件特許発明を実施したことによる超過売上高は、売上高(3億7500万円)の35%と認めるのが相当である」、「被控訴人と新日鐵間の本契約に基づく・・・・実施料率に加えて、本件特許発明の内容及びその技術的優位性等・・・・、その他諸般の事情を総合考慮すると、本件特許発明を第三者に許諾した場合の想定実施料率は、3%と認めるのが相当である」と述べている。 |