知財高裁(平成27年7月15日)“有精卵の検査法事件”は、「原告は、無効理由1の1については、法29条1項1号を根拠条文として挙げ、本件特許発明は、いわゆる公知の発明であると主張している」、「原告の上記主張は、引用公報記載の発明を具体的に特定した上で、本件特許発明は、出願前に公然知られていた引用公報記載の発明と同一の発明であり、したがって、本件特許に係る出願は法29条1項1号に反し、無効であるとの主張をするものであると理解することができ、これらの事実を立証する証拠として引用公報を提出したものであるから、法131条2項の『特許を無効とする根拠となる事実を具体的に特定し、かつ、立証を要する事実ごとに証拠との関係を記載したもの』との記載要件を満たすものといえる」、「被告は、本件審判請求書の無効理由1の1について、単に文書が掲示され、そこでの記載事実が示されたとしても、いかなる発明がいかなるように公然知られたのかが明らかであるとはいえず、法29条1項1号に規定する発明に該当することを根拠づける具体的事実として何を主張しようとしているのかが理解できないし、このような無効理由を主張する場合には、より具体的に請求人の主張する事実と証拠の関係を明らかにしなければ被請求人の対応負担は大きいと主張する。しかし、・・・・原告は、引用公報を掲示したのみならず、本件補正において引用公報記載の発明の要旨をも記載して、本件特許発明と同一であると主張し、発明の内容を特定している。そして、公知であるというためには、現に第三者に発明の内容が知られている必要があるとの解釈を採るとしても、特許公開公報は、単なる刊行物と異なり、刊行により当然に多数の企業関係者等の目に触れることとなり、その内容が公然と知られるものと一般的に理解されていることからすれば、原告は、このような引用公報の公開自体をもって、同公報記載の発明が公然知られたということを主張しているものと理解される。また、そのような無効理由の主張がされることにより、法29条1項3号に該当するとの主張をされた場合と比して、被請求人の対応負担が大きいものともいえない・・・・。したがって、被告の主張は採用することができない」と述べている。 |